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「唯一デコルテに自信がある」女優・脚本家に乳がん宣告、自らの癒しに必要だったものは…

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 乳がん治療で苦悩した横浜市港北区の脚本家・ 鹽野しおの 佐和子さん(57)が、乳房切除経験に基づいた笑いあり涙ありのラブコメディーを創作し、3月19~21日に市内で上演する。演技経験がない乳がん患者も舞台に立ち、鹽野さんは「胸は女性の美しさの象徴。命か胸かの選択は簡単なことではないと理解してもらいたい」と語る。(樋口貴仁)

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台本を手に、創作のきっかけを話す鹽野さん(横浜市中区で)

 鹽野さんはアメリカの大学で演劇を学び、アマチュアの女優としても活動した。20年以上にわたってテレビドラマやドキュメンタリーの脚本を手がけ、アニメ「ちびまる子ちゃん」の英語版では声優の演出も行った。

 2017年12月、右の乳頭に違和感があって市内のクリニックを受診し、乳がんと診断された。右わきのリンパ節などへの転移もあった。担当医から乳房の切除手術が提案されたが、鹽野さんには、「唯一、デコルテ(首元)には自信がある」と強い抵抗があった。しかも、胸の再建手術を同時には行えないと言われた。

 結局、切除と再建を同時に手術できるクリニックを選んだ。手術後も転移部分への放射線治療は続いた。胸の周辺が真っ黒にただれ、診療室に入れなくなったこともあったという。

 「病気になって経験した傷を癒やすために表現が必要だった」ため、1年間に及ぶ治療を基に劇「ブレストウォーズ 恋する標準治療!~女の胸はときめくためにある。」を書き上げた。

俳優らとともに台本の読み合わせを行う中山さん(右)(横浜市緑区のみどりアートパークホールで)

 横浜・野毛山(西区)にある架空の患者ハウスを舞台に、3人の乳がん患者らの元恋人との再会や担当医とのすれ違いを描いた。患者の意向を聞こうとせず、淡々と治療の説明をする医師にぼう然としたり、別の医師から慰められたりしたエピソードを盛り込んだ。鹽野さんは「診察室のシーンは現実感にこだわり、3か月ほどかけて他の乳がん患者にも取材した」と話す。

 当初はプロの俳優だけで制作する予定だったが、演劇の体験会を実施した患者団体があると聞き、闘病の苦しみを知る乳がん患者に芝居してもらう仕掛けを思いついた。市内で昨年9~12月、体験会を10回開き、25人が参加した。本人役で出演する東京都豊島区、コピーライター中山由紀子さん(56)は「演技経験はないけど、がん患者としてはプロなんだという思いを胸に本物の俳優さんに負けない存在感を出したい」と語る。

 治療を終えた19年1月、「私はあと何年ぐらいかしら」と尋ねると、医師の答えは「今の生活が維持できるのはあと5年ぐらいかな」。2年過ぎた今、鹽野さんは「今回が最後の作品だと思う。自分の母親や奥さんがいつ発病するか分からない。より多くの人に乳がんのことを知ってもらいたい」と力を込める。

 公演は横浜市緑区の「みどりアートパークホール」で行われる。当日券は一般4800円、高校生以下3300円。問い合わせは制作実行委員会の代表メール(info@brekoi.com)へ。

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