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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

「似たもの夫婦」は、睡眠習慣も似てくるのか?

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。

 似たもの夫婦という言葉があります。一つ屋根の下で長年生活していると、生活習慣はもちろん、趣味や食事の 嗜好(しこう) まで似てくる時があります。でも、睡眠習慣についてはちょっと事情が異なるようです。

長年、連れ添っても…

「似たもの夫婦」は、睡眠習慣も似てくるのか?

 結婚などを機に、一緒に暮らし始めると、お互いの睡眠習慣が違うことに気づいて驚くことがあります。早寝タイプと夜更かしタイプ、睡眠時間の長さ、寝起きの良しあし、昼寝の有無など、睡眠習慣は思いのほか夫婦のライフスタイルに影響します。時には、休日に寝だめをしたい夫と、朝から元気な奥さんとの間で夫婦げんかになることも。

 そんな二人でも、結婚して長年連れ添っていれば、だんだん睡眠習慣は似通ってくるのでしょうか? そのような疑問から225組(450人)のご夫婦に協力いただき、睡眠習慣の類似度について調べたことがあります。研究に参加したご夫婦の平均同居年数は17年(1年~48年)。食事を一緒にする回数は、週あたり朝食が約4回、夕食が約5回。そして90%近くの夫婦が同じ寝室で寝ていました。

 その結果は……。毎日寝食を共にしている夫婦間でも、寝つく時間(入眠時刻)や目覚める時間(覚醒時刻)は個人差が大きく、結婚生活が長くなってもお互いに似通ってくることはありませんでした。パートナーの睡眠習慣や同居年数、食事を一緒にする回数、寝室が同じであるか、などはお互いの睡眠習慣に影響していませんでした。つまり睡眠習慣については、長年連れ添っても「似たもの夫婦」にはならないのです。

「女性の家事負担」も、睡眠パターンに影響している

 それでは睡眠習慣に大きく影響するのは何でしょうか? それは「クロノタイプ」と「必要睡眠時間」です。クロノタイプは、別名「朝型夜型」のことで、その人が毎晩、何時頃に眠くなるかを決めています。必要睡眠時間は、疲労回復に最低限必要な睡眠時間のことです。この2つのパターンの組み合わせによって睡眠習慣は形作られます。クロノタイプ、必要睡眠時間はともに体質的(遺伝的)な影響を受けているため、個人差も大きく、いくら愛する伴侶といえども、相手の睡眠習慣に合わせることは難しいのです。

 クロノタイプ、必要睡眠時間はともに体質的(遺伝的)な影響を受けています。そのため、いくら愛する伴侶といえども、相手の睡眠習慣に合わせることは難しいのです。

 先の調査でも、夫婦それぞれの入眠時刻や覚醒時刻に最も強く影響していたのはその人のクロノタイプであり、同居年数が長くなっても夫婦間で似通ってくることはありませんでした。同じ屋根の下で暮らしていれば、お互いの仕事、子育てなど、その時々の生活上の必要性から寝起きの時刻は影響を受け、見かけ上、似通うことはあるかもしれません。でも、それはあくまでも一時的なもので、最終的には自分自身の体質に合った睡眠習慣に落ち着くようです。

 ただし、男性にとっては耳の痛い発見もありました。実は、女性の場合のみ、覚醒時刻が夫の覚醒時刻に影響されていたのです。その理由は分かりますよね? 妻が夫の朝食や弁当作りのために早起きをする、など主に女性に家事の負担がかかっているからです。逆に、夫は妻の睡眠習慣に影響されることはありませんでした。1991年のサラリーマン川柳に「まだ寝てる、帰ってみればもう寝てる」という作品がありましたが、これは例外と言えるでしょう。 (三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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