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食道がんの縦隔鏡手術…術後の肺炎を抑える

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 食道がんの治療法が変わりつつあります。かつては、胸を大きく切り開く手術が主流でしたが、小さい傷で済む内視鏡手術が広がっています。2018年に公的医療保険の適用となった 縦隔じゅうかく 鏡手術は、肺炎など手術後の合併症も抑えられるのが特長です。(竹井陽平)

食道がんの縦隔鏡手術…術後の肺炎を抑える

  喫煙・飲酒でリスク

 食道がんは、年間に約2万5000人が新たにかかり、約1万2000人が亡くなっています。

 喫煙と飲酒がこのがんになる危険性を高めます。さらに男性が女性の5倍ほどなりやすく、50歳代から増え始めます。

 食道がん治療は、手術が中心になります。食道の大部分と周囲のリンパ節を切除し、胃をのど元まで持ち上げてつなぎ合わせる方法が多くを占めます。

 食道は気管と背骨にはさまれた体の奥にあります。周囲には心臓や肺があるため、その手術は非常に高い難易度です。40年以上前から行われてきたのが、「開胸手術」です。のど元と右胸、腹部の3か所を、10センチ以上切開し、 肋骨ろっこつ も切る大がかりな手術です。患者の体の負担は大きくなります。右側を切るのは、心臓を避けるためです。

 手術後の肺炎も問題です。発症率は14%という報告があります。手術中、器具を動かすスペースを確保するため、麻酔で薬を使って右肺をしぼませる処置を行った影響とみられています。

 この処置中は、左肺のみで呼吸を行わなくてはいけません。肺の機能が弱いと、手術が受けられないこともありました。

  肺機能弱い人にも

 内視鏡手術は、体の表面に小さな穴を開け、カメラやメスなどの器具を入れる方法です。

 まず導入されたのが、胸やわきの下から器具を入れる「 胸腔きょうくう 鏡手術」です。傷は小さく、肋骨を切る必要はないのですが、右肺をしぼませる処置は必要で、手術後に肺炎が起こる割合は、開胸手術と同程度です。

 新たな内視鏡手術として、治療効果が認められ、3年前に保険適用されたのが、「縦隔鏡手術」です。

 縦隔は、右肺と左肺、胸骨と背骨に囲まれた空間です。のど元に3センチほどの小さな切り込みを入れて、そこから縦隔に器具を入れます。器具は両肺の間をぬって食道に届くため、肺の処置は不要です。肺炎の発症率は7%に下がりました。

 肺の機能が弱い人にも安全に手術を行うことができます。関東地方の60歳代の男性は、昨年12月に東大病院(東京都文京区)で縦隔鏡手術を受けました。肺がんを経験しているため、開胸手術と胸腔鏡手術は難しいとされました。医療機関からの紹介で、縦隔鏡手術の経験豊富な同病院にたどり着きました。

 男性は手術後、主治医に、「もう手術は受けられないと思っていた。今はおいしく食事もできる」と語ったそうです。

 同病院の研究では、開胸手術と比べ、手術後の食欲不振や疲労感などの不調も明らかに減りました。同大消化管外科教授の瀬戸泰之さんは、「高い技術が求められるため、実施する病院はまだ限られます。がんの広がりによっては開胸手術になるケースもわずかながらあります」と指摘しています。

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