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がんのサポーティブケア

医療・健康・介護のコラム

がん治療後のむくみ「リンパ浮腫」 弾性着衣や弾性包帯で圧迫 手足の傷や感染に注意を

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「少しむくんできたかな」と感じたら早めに受診を

腕や脚にリンパ浮腫を発症した様子(「Q&Aで学ぶ リンパ浮腫の診療」から。作田さん提供)

腕や脚にリンパ浮腫を発症した様子(「Q&Aで学ぶ リンパ浮腫の診療」から)

 ――同じ手術を受けてもリンパ浮腫を発症する人としない人がいるのは、なぜですか。

 確かに、様々な要因が重なってリンパ浮腫になる人、一方、同じ手術を受けても発症しない人がいます。違いがどこにあるのか、明確な理由は分かっていません。リンパ浮腫に関してのエビデンスが少ないと言われる点のひとつです。

 現時点でリンパ浮腫発症の危険因子とされている日常生活の懸念事項は、「肥満」と「感染」です。体重が増えないように食生活を見直すことと適度な運動を生活に取り入れることが大切です。リンパ浮腫が出る部位への感染も発症の引き金になりますので、皮膚を傷つけないように日常生活で気をつけていただきたいと思います。

 患者さん自身が初期兆候に早く気づいて、リンパ浮腫のケアをいち早く導入することが、重症化を防ぐことの近道です。「少しむくんできたかな」と感じたら、まずは診察を受けていただきたいです。

――重症化するとどんな影響がありますか。

 症状の進行度によって生活への影響は異なります。「ちょっとむくんできたかな」という程度の初期であっても、外見上の問題が発生することは事実で、患者さんにとって最大の悩みです。着たい服が着られないとか、履きたい靴を履けないといったことに始まり、むくみによる「重だるさ」のせいで動くのがおっくうになるという問題も生じます。重症化すると生活への支障も大きいです。

――精神的な面にも影響がありますか。

  むくみによってもたらされるボディーイメージの変化を、なかなか受け入れることができない方もいらっしゃいます。自分の存在自体を否定してしまったり、他人の目を異常に気にするようになったりして、徐々にひきこもりや抑うつ状態に陥ってしまわれるケースも少なくありません。周囲や医療者が早めに気づいて対処することが大切です。

圧迫療法、運動療法、スキンケア、体重管理、用手的リンパドレナージを複合的に組み合わせて

 ――治療についてうかがいます。手術で治す方法はありますか。

 がんの手術でリンパ節を切除し、リンパ浮腫を発症してしまった場合、残念ながら今のところ根治させる治療法はありません。リンパ浮腫の治療法の一つとして、静脈とリンパ管を結ぶ手術はあります。リンパ液が静脈に流れることで確かに一時的に良くなることはあるのですが、それだけで根治するわけではありません。手術を受けても、弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法などの保存療法を続けていくことが必要です。

――治療は何科にかかればよいのですか。

 がんの治療を受けた医療機関の診療科にかかるのが第一です。治療後、何年も経過し、もう受診されていないようであれば、かかりつけ医にご相談されるのがよいと思います。

 「リンパ浮腫の専門外来」が、がんの診療を行う病院などに設けられています。かかりつけ医に相談される際には、患者さんご自身が、例えば自分は乳がんの手術を受けてリンパ節を切除しているためにリンパ浮腫の疑いがあるなどの説明をしてくださると、専門外来への紹介もスムーズだと思います。

――具体的にどんな治療をするのですか。

 リンパ浮腫の基本治療は、複合的治療です。複合的治療は次の五つの治療で構成されています。(1)弾性着衣や弾性包帯による圧迫療法、(2)圧迫した上での運動療法、(3)スキンケア、(4)体重管理などのセルフケア指導、(5)用手的リンパドレナージです。

 スキンケアは、見過ごされがちですが、皮膚のバリア機能を保つために大変重要なのです。皮膚を保湿して乾燥を防ぐことで、傷つきにくくする意味があります。それによって、感染を防ぐことができます。また、自分の皮膚を毎日観察することは、小さな変化をより早く見つけることにつながります。ぜひ、入浴後の生活習慣に取り入れていただきたいです。

――用手的リンパドレナージとは何ですか。

 皮膚の表面から近いリンパ管には、リンパ液の逆流を防ぐための弁がありません。このため、手のひら全体を皮膚の上にあて皮膚を動かすことによって、リンパ液を正常に機能しているリンパ管へ誘導することができます。リンパ浮腫治療のための用手的リンパドレナージは、美容目的のリンパマッサージなどとは違って、専門の医療職によって行われます。

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がんのサポーティブケア

 がんやがん治療に伴う副作用が及ぼす痛みやつらさを和らげ、がんと闘う患者を支えるのが「がんのサポーティブケア(支持医療)」です。手術や放射線、薬物療法をはじめとする、がんを治すための医療と車の両輪の関係にあります。この連載では、がんに伴う痩せの悩みや、治療に伴う副作用、痛みや心のケアなど、がんのサポーティブケアが関わるテーマについて月替わりで専門家にインタビューし、研究の最前線や患者・家族らへのアドバイスについて伺います。

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