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がんのサポーティブケア

医療・健康・介護のコラム

がん治療後のむくみ「リンパ浮腫」 弾性着衣や弾性包帯で圧迫 手足の傷や感染に注意を

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作田裕美・大阪市立大学教授に聞く

作田裕美さん

作田裕美さん

  がんのサポーティブケアの連載3回目は「リンパ浮腫」がテーマです。根本的な治療法がなく、重症化すると生活にも支障を来すため、早期からのケアが大切です。がんの治療後にリンパ浮腫を発症する理由や患者自身でできるケアの方法について、がん看護が専門の大阪市立大学教授(看護学)の作田裕美さんに聞きました。(聞き手・田村良彦)

――がんの治療後にリンパ浮腫を発症することがあるのはなぜですか。

 がんの代表的な治療法は、手術療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法です。手術治療の場合、転移の可能性がある周囲のリンパ節も一緒に切除することがあります。リンパ節の切除やリンパ管が損傷を受けることで、リンパ液の流れが滞って、むくみ(浮腫)が生じます。また、放射線治療もリンパ管を傷つける可能性があります。抗がん剤治療でも、機序は少し違いますがリンパ浮腫が起きることがあります。

――がんの種類による違いはありますか。

 手術後リンパ浮腫は、切除されるリンパ節の部位によって生じやすさに違いがあります。わきの下のリンパ節(腋窩=えきか=リンパ節)や、骨盤内のリンパ節、脚の付け根のリンパ節(鼠径=そけい=リンパ節)は、リンパ浮腫の原因となりやすいと考えられています。ですから、腋窩リンパ節を切除する乳がん、骨盤内や脚の付け根のリンパ節を切除する婦人科がんで発症しやすいのです。

 たとえば、左乳がんで左の腋窩リンパ節を切除すると、左腕だけでなく上半身の左半分にむくみが出る可能性があります。余計なリンパ節切除を防ぐため、腋窩リンパ節に転移があるかどうかを調べて、転移がなければリンパ節を切除しないセンチネルリンパ節生検が普及しています。

――男性には起きないのですか。

 乳がんや婦人科がんで起きやすいので女性のがんに多いですが、男性にも同じように起きます。大腸がんや胃がんの手術でリンパ浮腫を発症した男性の患者さんもいらっしゃいます。

がんの治療後3年以内に発症 感染などが引き金に

 ――手術後すぐに表れるのですか。

 少し前のデータになりますが、最も多いのは治療後1年以内の発症で、次に多いのが3年以内でした。10年ぐらいたってから発症した方もいらっしゃいます。なぜ発症時期に幅があるのかという、はっきりした理由は分かっていません。

 患者さんに話を伺うと、発症のきっかけはいろいろです。外でガーデニング中に手に傷をつけ、ばい菌に感染したとか、かわいがっているペットにかまれたとか、素足でけがをしたのが基で蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったのが原因で発症するケースもあります。

――見つかるきっかけは何ですか。

 患者さん自身が、腕や足が太くなったなどの外見上の変化に気づくことが多いです。普段はめている指輪がきつくなったとか、洋服の片側は余裕があるのに反対側だけきつくなってきたとか、靴が片方だけきつくて履けないとか、靴下を脱いだら跡がつくようになったといったケースです。

 女性はもともと筋肉量が少ないので、夕方になると脚がむくむという方が多いです。このため、日頃からむくみがあったせいで、手術後のリンパ浮腫の初期兆候が見逃されてしまうことがよくあります。片方の脚だけむくむとか、限局した部位にむくみが起きたら、手術の影響によるリンパ浮腫を疑う意識を持っていただくことが大切です。

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がんのサポーティブケア

 がんやがん治療に伴う副作用が及ぼす痛みやつらさを和らげ、がんと闘う患者を支えるのが「がんのサポーティブケア(支持医療)」です。手術や放射線、薬物療法をはじめとする、がんを治すための医療と車の両輪の関係にあります。この連載では、がんに伴う痩せの悩みや、治療に伴う副作用、痛みや心のケアなど、がんのサポーティブケアが関わるテーマについて月替わりで専門家にインタビューし、研究の最前線や患者・家族らへのアドバイスについて伺います。

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