大人の健康を考える「大人び」
医療・健康・介護のコラム
脚の痛み(13)足の親指の付け根に激痛…「痛風」プリン体とりすぎ注意 尿酸値のコントロールを
このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)
ビールの飲み過ぎや魚卵などの食べ過ぎで血液中の尿酸値が上がり、主に足の親指の付け根が腫れて激痛に襲われるのが「痛風」です。その名の通り風が吹くだけでも痛く、歩けなくなります。
尿酸は、食事に含まれる「プリン体」が分解されてできます。尿酸値が一定の範囲を超えると、尿酸の一部が関節にしみ出て針状の結晶になります。これを白血球が異物と見なして攻撃すると炎症が起き、痛みが出ます。足先でよく起きるのは、この部分は体温が低く血流も少ないため、結晶がたまりやすいからです。膝や手の関節などで炎症が起きる人もいます。
治療はまず、鎮痛薬などで炎症を抑えた後に尿酸値を下げる薬を飲みます。薬は尿酸を作りすぎるタイプか、排せつする力が弱いタイプかで違う場合があります。
痛風の発症は遺伝なども関係しますが、尿酸値の高い人は服薬で普段からコントロールする必要があります。尿酸値が高いまま放置すると、尿路結石や腎機能の低下を招きます。アルコールやプリン体の多い食品のとりすぎを避け、水分を十分に摂取し、適度な運動を心がけてください。
痛風と同様に、膝や肩などの関節が急に真っ赤に腫れて痛むのが「 偽 痛風」です。主にピロリン酸カルシウムという物質の結晶が関節にたまって炎症が起きます。加齢に伴い結晶ができやすくなるとみられ、患者の多くは70歳以上の高齢者です。偽痛風の場合、痛み止めを数日飲めば治ります。
このほか、膝などの関節内に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの細菌が侵入すると、赤く腫れる 化膿 性関節炎を発症することもあります。急な激痛に襲われたら速やかに受診しましょう。
【略歴】
津田 隆之(つだ・たかゆき)
三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。
【関連記事】