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医療・健康・介護のコラム

不妊治療の費用助成 医療機関の情報開示が条件 でも肝心の治療成績は任意!?

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不妊治療の費用助成 医療機関の情報開示が条件 でも肝心の治療成績は任意!?

 1月末、「 不妊治療の夫婦に費用助成、情報開示した医療機関での実施を条件に 」(1月27日 読売新聞オンライン)というニュースが流れました。

開示は医師・スタッフ数や治療件数

  記事には「助成対象の指定医療機関になるには、産婦人科専門医や受精卵を扱うスタッフらの人数、治療の種類、年間の治療件数、治療費などの情報を自治体に報告することが必須となる。このほかに、昨年1年間の年代別の患者数や、患者数が多い35~39歳の女性に対する治療成績(妊娠数、出産率など)の報告も任意で求める」とあったのですが、これが不妊治療業界にはちょっとした波紋を呼びました。特に当事者である患者たちは、SNSなどで続々と意見を投稿、その多くは「情報開示の仕方」への不満や不安でした。

治療成績はなぜ任意? 計算方法は?

  私自身も、この記事を読んだ時、「情報開示は一歩前進で、大変喜ばしいことだ」と思いながらも、最も肝心な「治療成績」が、なぜ必須ではなくて任意なのか? また、その情報の計算方法は、果たして病院の実力を真に測れるものになるのか? さらに、その情報はどのようにして報告されるのか、などなど、枚挙にいとまがないほど、頭の中が「???」になってしまいました。

情報収集が得意なライターでも病院選びはお手上げ

  つい先日も、これから治療を始めようという方から相談を受けたばかりです。

 Mさんは現在30歳。編集の仕事をしていたのですが、結婚を機にフリーランスの編集ライターとなったそうです。結婚は2年前で、1年前から不妊治療をはじめ、これまでに近所の産婦人科で人工授精を5回行ったといいます。

 「体外受精はちょっと抵抗があったし、病院を変わらなきゃならないし、何よりも費用が高すぎるので、自分たちには手が出ないとあきらめていたんですよね。でも、今度安くなるっていうから、じゃあ1回受けてみようかって夫と話して……。それで、病院を変わらなきゃいけないから、どこに行こうかってことになって調べてみたら、さっぱりわからなくて……」。どの病院へ行ったらいいかわからないので、アドバイスが欲しいという相談でした。

 Mさんは仕事柄、情報収集はとても得意で、取材のたびにネットで様々な情報を検索しては収集して整理するのは慣れたものだといいます。しかし、その彼女をして「難しくて、さっぱりわからない」と言わしめる、この不妊治療病院の情報。Mさんはすっかり気落ちし、せっかく前向きに治療のステップアップをしようと思っていたのに、その気力もなくなってしまったそうです。

 確かに不妊治療の医療機関は、ホームページ(HP)こそほとんどのところが持つようになったものの、治療方針や治療方法、またそれぞれの料金、オプションの組み合わせ、何よりも知りたい治療の成績が開示されていたり、いなかったり、たとえ開示されていても、その表現がまちまちであったりして、わかりづらいことこの上ないのです。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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