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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

「延命措置はいらない」という高齢者の希望がかなわない……新型コロナで起きていること

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 私が初めて新型コロナウイルス感染症の患者さんを診たのは、ダイヤモンド・プリンセス号の中でした。私のクリニックがある川崎市は横浜市に隣接し、ダイヤンド・プリンセス号が停泊した際には、神奈川県医師会からの派遣で船内で支援活動を行いました。あの時は、「海外で流行していた感染症がついに日本へ」という衝撃はあったものの、どこか海外の病気という感覚を私自身も持っていて、支援活動の後も特段の感染対策は考えていませんでした。しかし、程なくして日本でも流行が始まったのは、皆さんもご承知の通りです。

この冬の第3波で高齢者や子どもに感染が広がった

「延命措置はいらない」という高齢者の意思がかなわない……新型コロナで起きていること

  流行が始まって、当院でも慌ててアクリル板の設置やアルコール消毒の徹底など感染防御対策を始めました。そして、昨年4月には「発熱外来」を開始して、近隣のみならず、他県からの患者さんも受け入れるようになりました。現在では、有症状者に対するPCR検査も行っています。

 流行が始まって1年。昨年12月に感染者が急増した第3波もようやく新規感染者が減ってきましたが、第3波の流行は、それまでとは比べ物にならない怖さがありました。感染者の増加の勢いと言うよりも、これまでとは異なった感染者が増えてきたことの怖さでした。ついに高齢者や子どもたちへの流行も始まったのです。

 連日、高齢者施設や保育園でのクラスター発生の疑いで、出張でのPCR検査が始まりました。高齢者施設では、PCR検査をした翌日に亡くなる方もおり、保育園では「園医の先生が来た」と喜んで、子どもたちは口を開けて待っていてくれるのですが、綿棒を入れるのは鼻の奥。驚かせてつらい思いをさせ、なんともやるせない日々が続きました。そして、一番心を痛めたのは、保健所職員の皆さんの疲弊でした。

患者が入院できないと、患者の管理は保健所の責任になり過大な負担に

  感染症法では、感染症を最も危険な1類から通常のインフルエンザなどの5類に分けています。新型コロナ感染症は、「2類感染症」に指定されています。2類感染症の場合、感染患者は全て入院による隔離措置が原則となります。私たちかかりつけ医は、この感染症と診断したら、速やかに保健所に連絡し、引き継ぎを行います。保健所の職員は、入院先を探し、患者さんは当日もしくは翌日には入院という流れでした。つまり、保健所が患者さんを直接管理するのは、病院に引き継ぐまでの数時間もしくは1日程度のはずでした。

 しかし、第3波では、入院ベッドが満床になったため、患者さんは自宅療養を余儀なくされたのです。病院もホテルと一緒ですので、空いていない時はどうにもなりません。そして、自宅療養の患者さんの管理も保健所の職員が行うことに、いつの間にかなってしまいました。連日、保健所の職員が自宅療養者と連絡を取り、体調を確認し、急変しているようであれば、緊急入院を手配するという過酷な状況でした。しかも、保健所は医療機関ではないので、薬を処方することもできません。電話をかけている職員も必ずしも医療職ではないのです。

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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