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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

「延命措置はいらない」という高齢者の希望がかなわない……新型コロナで起きていること

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かかりつけ医が関わることで患者の意思を生かす

  保健所が患者を管理するという体制は、別の問題を招いています。テレビや新聞でも報道されていますが、集中治療室(ICU)で人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)で管理されている重症者に占める高齢者の割合が連日高まってきています。このような患者さんの中には、もともと「私はいざという時には、人工呼吸器などの延命措置は受けたくない」という希望の方も少なからずいるはずです。しかし、現在の保健所の管理では、このような患者さんの意思確認は十分にできるはずがありません。これからは、患者さん一人一人を知る、かかりつけ医がもっと関わるべきだと思います。

 当院でも、診ている患者さんが新型コロナウイルスに感染した際のフォローや、陽性者や、症状が落ち着いた後の患者さんが速やかに自宅療養できるための在宅医療の体制を構築しつつあります。政府や自治体を責めるのではなく、一人一人ができることを少しずつでも実践することが、この感染症との長い闘いを続けていく上でも重要と考えています。

ワクチン接種で社会を感染から守る

「延命措置はいらない」という高齢者の意思がかなわない……新型コロナで起きていること

  一般の皆さんがこれからできることの一つに、予防接種があります。予防接種の効果を考える上で、大切な考え方があります。それは、「個人を守ること」と「社会を守ること」の二つです。予防接種を受けることで自分を感染から守る、これはわかりやすいと思います。しかし、ワクチンは発症を予防するだけではなく、重症化を予防するという面も強いです。コロナワクチンも重症化予防のデータが少しずつ出てきました。

 もう一つの大切な考え方である「社会を守る」についても、しっかり知っていただきたいです。多くの人が予防接種を受けることで、免疫を獲得していると、もし集団の中で感染者が出ても流行を阻止できる「集団免疫効果」が発揮されるのです。みんなで予防接種を受けることで、みんなを守ることができる。それで高齢者や基礎疾患を持つコロナに弱い人たちをウイルスから守ることもできるのです。そのためにも、私はワクチンを率先して受けたいと考えています。

 まだまだ、ウイルスとの長い闘いは続きます。私もかかりつけ医がやるべきことを、根気強く実践していきます。(大橋博樹 医師)

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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