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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「痛い所に貼った」というおばあちゃん それは狭心症の薬です…血圧低下の危険 貼付薬は正しく使って

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 幼かった頃、「小児ぜんそく」に苦しめられた記憶がある。息苦しくてあえいでいる私の胸に、母親は湯で湿らせたタオルを置いてくれた。ありがたいことである。そうした手当ては、「 罨法(あんぽう) 」と呼ばれる湿布に含まれるが、今回のテーマは、それとは違い、痛い所、腫れた所に貼り付ける非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含んだ湿布薬である。

「外用剤」と「経皮吸収型製剤」がある

「痛い所に貼った」というおばあちゃん それは狭心症の薬です…大量吸収で血圧低下の危険 貼付薬は正しく使って

 薬を体内に運び込むためには、口から飲み込む、 口腔(こうくう) 内や舌下へ貼る、鼻腔内に噴霧する、肛門に挿入する、吸入する(ぜんそく治療薬)、皮膚から吸収する、注射(血管、皮内、皮下、筋肉)するなど、さまざまな経路が用いられている。これらのうちで、皮膚からの薬物の吸収を目的とした製剤を“経皮用剤”と呼ぶ。さらに、経皮用剤は大きく「外用剤」と「経皮吸収型製剤」(Transdermal Drug Delivery System、略してTDDS)に分けられる。この違い、局所麻酔薬と全身麻酔薬の違いを想像していただくと分かりやすいだろう。

 外用剤とは、皮膚およびその近くの治療を目的として用いるものであり、古くからの医療用湿布(メントールを含んだパップが主流)である。一方、TDDSは、皮膚から吸収され、全身の血流に乗って効果を示すものであり、局所での治療を主目的とはしていない。例えば、狭心症の治療に用いるニトログリセリン、気管支ぜんそくのツロブテロール、更年期症候群のエストラジオールなどを含んだ貼付薬もTDDSの仲間なのである。

「痛い所に貼れば効くと思って」

 患者さんには身近に感じられる貼付薬だが、その使用には注意が必要だ。笑えない「笑い話」がある。

 あるおばあちゃんは、狭心症のために処方されたニトログリセリンの貼付薬を何枚も膝に貼っていた、「痛い所に貼れば効くと思って」。これは笑えない。ニトログリセリンが大量に体内に吸収されると、重篤な血圧低下を起こしてしまうのだ。

 また、あるおじいちゃんは、痛みの治療に用いる麻薬を主成分とするテープを、毎日、古いテープの上から重ねて貼り続けていた。通常は前日の分をはがした上で、新しく他の部位に貼るべきなのだが、重ねて貼っても効果はない。テープを処方した担当医の説明不足を責めるべきであろう。

 この他、注意すべきなのは、貼付部位の「接触性皮膚炎」(いわゆるかぶれでかゆみ、発赤、場合によっては 水疱(すいほう) を作る)の予防である。外用剤(いわゆる湿布)では、患者さんに「4時間以上、貼りっぱなしにするのはやめましょう、寝る前に貼って、朝まではダメですよ」と説明しているのだが、 強者(つわもの) ともなると「はがしてはまた貼って、一日中貼ってるよ」をやらかしているのだ。貼付後4時間もすれば、含まれている薬物は皮膚から吸収されているのだから長時間貼る必要はない。

 また、後述のケトプロフェンを含んだ製剤では「光線過敏症」も問題となる。この場合、紫外線対策として、服やサポーターで貼付部位を覆っておく必要がある。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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