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若い人にも起きる原発性アルドステロン症 ホルモン過剰で高血圧に…脳卒中や心筋梗塞のリスク高く
腎臓のそばにある副腎から血圧を上げるホルモンが過剰に分泌され、高血圧になる病気が「原発性アルドステロン症」です。通常の高血圧よりも脳卒中や心筋 梗塞 などを引き起こすリスクが高く、早期の診断・治療が大切です。(長尾尚実)
若者も発症
副腎の大きさは約3センチで、左右の腎臓の上にあり、体内に様々なホルモンを供給しています。アルドステロンはその一つで、腎臓に作用して塩分を取り込み、血圧を上げています。
副腎に異常があると、必要以上に分泌され、体内に塩分をためこみ過ぎて高血圧になります。副腎の異常は、両方の副腎が腫れて大きくなる場合が6~7割、片方に良性の腫瘍ができる場合が3~4割と言われています。
日本高血圧学会の診断基準では、上の血圧が140以上、または下が90以上あると高血圧となります。多くは、肥満や喫煙、塩分の取り過ぎなどが原因で、年齢とともに発症しやすくなります。
原発性アルドステロン症は若い人でも発症し、生活習慣とは関係なく高血圧になります。国内の高血圧患者の約1割、約200万~400万人がこの病気であると考えられています。
アルドステロンには、細胞や神経の機能維持に必要なカリウムを 排泄 させる働きもあり、血液中のカリウムが不足して、手足に力が入らなくなることがあります。腎臓で尿を濃縮する力が弱まり、夜中に何度も尿意をもよおす人もいます。
心臓にも悪影響
原発性アルドステロン症は、血液検査でホルモンの分泌量を調べることで見つかります。多くは、健康診断で高血圧とわかったり、降圧薬を服用しても血圧が下がりにくかったりしたことがきっかけで気づきます。40歳以下で脳卒中になった、不整脈がある、腎臓の病気を患っているといった人も、この病気を疑った方がいいでしょう。
アルドステロンの数値に異常があれば、コンピューター断層撮影法(CT)で腫瘍の有無などを調べます。入院し、副腎につながる血管にカテーテルを入れてアルドステロンの量を直接測る検査も行います。
腫瘍があれば、 腹腔 鏡を使って腫瘍のある副腎を摘出します。入院期間は約1週間です。多くの患者は手術で血圧の数値が改善します。副腎は二つあるので、片方を取り除いても問題はありません。
両方の副腎からアルドステロンが過剰に分泌されている場合などは、受容体 拮抗 薬を使います。このホルモンが腎臓に作用する際、「鍵と鍵穴」のように腎臓細胞の受容体と結びつくので、薬で「鍵穴」をふさぎます。アルドステロンが出過ぎる理由は詳しくわかっておらず、完全に治すことはできません。ただ、薬を飲み続けて血圧が下がれば、心臓や腎臓の機能を正常に保てます。
神鋼記念病院(神戸市)高血圧センター長の亀村幸平さんは「高血圧は自覚症状が少なく、働き盛りの年代は病院に行かない傾向がありますが、冬は血圧が上がりやすい季節です。アルドステロンの過剰分泌は心臓などにも悪影響を及ぼします。気がかりな点があれば専門医を受診しましょう」と話しています。
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