産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
課長が「コロナうつ」でダウン……「眠れない」から始まる心の異変
眠るために酒の量が増えていく
加藤課長:寝酒が1合から、2合、最近は4合。
私 :依存になっていくよ。
加藤課長:寝酒のせいか午後になると眠気があり、ついウトウトしてしまいます。部下からも「有給をとって休まれたら、どうでしょうか」と言われるのですが、部下が頑張っているのに休めませんよ。
私 :寝酒は眠りが浅くなります。だから昼間に眠気に襲われる。
加藤課長:心配になって、かかりつけの内科医を受診しました。先生からも「アルコール中毒になるから寝酒をやめなさい」と言われて、睡眠導入剤を処方してくれました。
私 :それで。
加藤課長:妻に相談したら、「専門の先生に診てもらったら」と言われたので、相談に来たわけです。
職場から離す「環境調整」が必要
私 :わかりました。やはり寝酒なしで眠れるようにするには、睡眠導入剤を使った方がいいですね。
加藤課長:副作用はありますか?
私 :軽い眠気くらいかな。
加藤課長:わかりました。
私 :(強い言葉で)加藤さん、単なる「不眠症」ではありません。休養を取って、治療に専念する必要があるので診断書を書きます。
加藤課長:休めませんよ。
私 :休養は必要です。職場から離れないと、ぐっすりと眠れないですよ。こうした環境調整も大事です。
加藤課長:課長に引き上げてくれた部長に申し訳ない。ダメです。
私 :奥さんも心配していますよ。次回、一緒に来てくださいね。
自宅では、表情が硬く、しゃべらない
私 :奥さん、同伴していただいてありがとうございます。加藤さん、眠れるようになりましたか?
加藤課長:多少は眠れるように。でも一度は、目覚めます。
妻 :夫は疲れ切っているようです。帰宅してもこわばった表情で、ほとんどしゃべりません。以前はそうではありませんでした。
私 :昇進直後にコロナ対策ですから大変だったでしょう。
妻 :主人が夜中に起きて台所に行くので心配で様子をこっそり見ていたら、お酒を一気にあおっている。「眠れないんだけど、睡眠をとらないと明日の仕事に差し支える」と言うんです。
私 :治療しないと、悪くなります。休みましょう。診断書を書きます。
加藤課長:休まないと、ダメか……。
妻 :先生、夫はうつ病でしょうか?
私 :うつ病と言うよりも、うつ状態と考えています。落ち込んでいますから。
妻 :(戸惑いながら)うつ状態はうつ病ではないのでしょうか?
私 :病名ではありません。落ち込んでいる状態を指しています。病名には、「うつ病」と「適応障害」の二つが考えられます。適応障害はうつ病と症状は似ていますが、例えば仕事に不適応を起こしている状態で、休日になると元気に遊びに行けるといった場合があります。
妻 :どうすれば、良いのでしょうか?
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