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訪問診療にできること~最期まで人生を楽しく生き切る~ 佐々木淳

医療・健康・介護のコラム

「俺はどうして死ななきゃいけないんだ」という魂の叫び…寄り添う在宅医療は人間としての仕事

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紹介される患者さんが増え、地域の求めに応えて診療所を設置

――現在はスタッフも多くなりましたが、どうやってこれだけの体制を作ってきたのですか。

写真・幡野広志

写真・幡野広志

 最初は、2006年に東京の中心の千代田区に大きな在宅診療所を作って、そこから23区の地域医療を支えようと考えたんです。やってみてわかったのは、都心から世田谷のはずれに行くと、それだけで半日仕事。移動に時間がかかると診療が破綻してしまうことです。在宅医療は地域密着が必要なんです。患者さんをたくさんご紹介いただいた地域にサテライト診療所を出すと、そこにまた、周辺から患者さんを紹介される。それで、またサテライトを増やすという形で拠点と仲間が増えていきました。現在、23区内は、平均で半径2キロ圏内に患者さんの8割がいます。

業務の生産性を上げ、医師は診療に注力

――悠翔会の本部におうかがいすると、フロアには、看護師や栄養士や事務スタッフのほかに、電子カルテのシステムなどを作るエンジニアセクションもありますね。

 ご依頼を受けた方は、できるかぎり診療させていただきたい。そのためには、仕事の効率を上げる必要があります。業務の生産性を上げるためには、電子カルテのシステムをより使いやすいものにするのも重要で、車のドライバーがチームに入っているので、移動中に電子カルテの仕事をしています。看護師さんに同行してもらって、医者の作業をやりやすくして、医療以外の相談は、ソーシャルワーカーに対応してもらう。課題ごとに専門に任せて、医者は診療に集中できるようにする。チームで当たって、医療の質と生産性を上げる努力をしています。システム開発もそのひとつで、ソフトの販売もしています。

――患者が人生の下り坂を幸せに暮らす支援をしようというお医者さんから、「生産性」という言葉が出てきて驚きました。

 患者さんやご家族の話をじっくりお聞きしていると、体調以外に、若いころの思い出やご家族のこと、個人的な悩みなどの話になることもあります。こうした時間をかけた問診は、大切な時間です。ですから、事務的な部分や移動などは、可能な限り効率化していきたいと考えています。

――超高齢化が進み、多くの方が亡くなるため、厚生労働省は今後、病院だけでは対応できず、福祉施設も含めた在宅での看取りを広げようとしています。そのため、在宅医療に高い診療報酬を設定して、在宅医療に取り組む医師を増やそうと誘導していますが、今ひとつその効果が出ていませんね。

 月2回往診をして24時間対応できる体制を取れば、7万7000円(高齢利用者は1割負担)になります。1人診ていれば年間100万円近くになる高額な医療です。それでも、開業医が一人で真面目に取り組むと大変だから、増えないということです。若い医師は、医療はチームでやるものと、あたり前に考えていますが、昔からの開業医の先生は、一国一城の (あるじ) で、ほかの医師や看護師などの医療チームと連携するという発想が乏しいので、在宅医療が広がりませんね。

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sasaki-jun_prof

佐々木淳(ささき・じゅん)

 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長。1973年生まれ。筑波大医学専門学群卒。三井記念病院内科、消化器内科で勤務。井口病院(東京・足立区)副院長、金町中央病院(同・葛飾区)透析センター長を経て2006年MRCビルクリニック(在宅療養支援診療所)設立。2008年、団体名を悠翔会に改称。首都圏15か所で在宅療養支援診療所を運営する。

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1件 のコメント

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人間的問題と医科学を両立させる仕組み作り

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

本文を読んでいて、いわゆる個人経営の開業医と地域の病院のニッチ産業として、病棟を持たない在宅医チームが出現したのだと理解できました。人間個人とし...

本文を読んでいて、いわゆる個人経営の開業医と地域の病院のニッチ産業として、病棟を持たない在宅医チームが出現したのだと理解できました。人間個人として患者や地域社会との関わりが問われる部分も、チーム対応によって軽減しうるということです。能力の大小だけでなく、相性の問題は大きいです。患者さん目線の医療という言葉はキャッチ―ですが、そこに至るまでの個人として、あるいは患者さんとしての理解や経緯との折り合いをつけていく作業は、時に重症患者よりも困難な作業でもあります。そして、地域でやっていくには、個人として好かれることも大事ですが、嫌われないことも大事です。そのへんの適性やモチベーションも医療者それぞれですから、今後もいろいろな形態が増えていけばとは思います。

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