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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

犬の定員空きを待ち、先にホーム入居 思いがけず1か月で同居実現、号泣

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愛犬のベラちゃんとの1か月ぶりの再会に涙を流す角井さん

愛犬のベラちゃんとの1か月ぶりの再会に涙を流す角井さん

 角井ハルさん(仮名、80歳代後半)が、私が経営する特別養護老人ホームさくらの里山科に入居したのは、2019年12月のことでした。そして、角井さんの愛犬のベラちゃん(マルチーズ 当時14歳)が入居したのは1か月後の20年1月です。なぜ、1か月遅れの入居となったのか? そこには、ちょっと寂しい理由と不思議な偶然があったのです。

脳梗塞で倒れ、愛犬と別れて有料老人ホームへ

 一人暮らし、いえベラちゃんとの二人暮らしだった角井さんが脳 梗塞(こうそく) で倒れたのは18年秋のことです。幸い、命に別状はありませんでしたが、下半身にまひが残り、車いす生活になってしまいました。自宅で一人で暮らすのは無理な状態です。そこで急きょ、有料老人ホームに入居することにしました。しかし、そのホームにベラちゃんを連れていけません。

 角井さんには子供がおらず、入院中は親戚がベラちゃんを預かってくれました。しかし、事情があって、その親戚も、長くはベラちゃんを預かることはできません。そこで角井さんは、東北に暮らす弟さんの一家にベラちゃんを預かってもらうことにしました。ベラちゃんと別れる時、角井さんは、「もう2度と会えないかもしれない」と思い、大泣きしてしまったそうです。

 角井さんの体調は安定しており、有料老人ホームでの暮らしは穏やかに過ぎていきました。しかし、ベラちゃんに会えない寂しさは募る一方でした。ベラちゃんも、角井さんの弟さん一家にかわいがられて幸せに暮らしていましたが、大切な人に会えない寂しさを募らせていたことと思います。

ペットと暮らせる特養を知り、入居申し込み

 そんな時、テレビでさくらの里山科のことを知った角井さんは、さっそく入居を申し込みました。

 多くの人が「特別養護老人ホームは、申し込んでもすぐに入れない。何年も待たなくてはいけない」と考えていると思います。しかし、今の特養の入所判定基準は、いわゆる順番待ちではないのです。申し込んでから待っている「待機時間」は、入所判定には影響しません。入所判定は、申し込まれた方の入居の必要性を考慮して行われるのです。

 入所の優先順位は点数化された勘案項目を基に決定されます。具体的には、横須賀市の場合は要介護度の評価が最高45点、介護者の状況の評価が同45点、特記事項が10点で、合計100点満点となります。

 まず要介護度の点数化は次の通りです。
① 要介護5=45点
② 要介護4=40点
③ 要介護3=30点

 介護者の状況は次の通りです。
① 身寄りがない等=45点
② 介護者が地理的に離れている、もしくは長期入院中等で介護不能=40点
③ 介護する者はいるが、要介護状態、病気療養中、障害がある等で、十分な介護が困難=35点
④ 介護する者も高齢、要支援状態、または複数の介護や育児をしている等で、十分な介護が困難=25点

  特記事項は次の通りです。なお ① は、さくらの里山科の独自評価項目です。合計で最高10点です。
① 犬、猫を飼っていて、その世話が困難
② 経管栄養、酸素療法等の医療処置が必要等
③ 住居環境が介護に適さない等

 ここで書いたのはあくまで目安であり、実際には色々と細かな基準、事例が定まっています。このような仕組みで、入居を申し込まれた方の入所の優先順位の勘案項目が点数化され、毎月開催している入居判定会で、点数が上位の方から入居が決まります。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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1件 のコメント

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ベラちゃんのおばさんへ

ケンタの姉

偶然目に留まったこの記事の角井さんは、私の実家のご近所さんです。ゆったりした服を着て、長い髪を頭の上でお団子状に束ね、いつも「ベラちゃん」を腕に...

偶然目に留まったこの記事の角井さんは、私の実家のご近所さんです。ゆったりした服を着て、長い髪を頭の上でお団子状に束ね、いつも「ベラちゃん」を腕に抱いて通りをお散歩していました。私の幼い頃からの記憶では、ずっとマルチーズを飼っている方で、代々その名前もいつもベラちゃんなんです。なので、近所の子どもたちは皆「ベラちゃんのおばさん」と呼んでいたんです。なんだかすごく懐かしいです。実家の母から以前、横須賀のホームへ行くという話と、その経緯を少し聞いていました。弟さんがベラちゃんを預かってくれるから、ホームに先に入って待っているんだと。1年ほど前にベラちゃんとの同居の念願がかなったんですね。記事からは、施設の皆さんの、人と動物に対する思いやりと愛情を感じます。このような施設が全国に広がるといいですね。

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