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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ

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 心身ともに成長発達期にある子どもにとって治療や闘病生活から受ける影響は大きく、成人とは異なる特有の問題が目の前に現れることがあります。それだけでなく、年間2000人余りという発症数の少なさから、小児がんに関する正しい社会的理解は進んでいません。治療終了後、成人して小児医療から離れる年齢になった時などにも新たな壁に直面し、孤立することが多くあります。

 私たちの会は、闘病中の患児(小児患者)・小児がん経験者とその家族に対して、「一人じゃない、ここにも君を応援している人がいるよ」というメッセージを伝え、千葉県内の小児がん治療施設と連携しながら様々な支援活動を行っています。

認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ

千葉県こども病院で開かれた「回転ずしパーティー」(2015年)

病棟内で開かれる回転ずしパーティーが人気

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運動会の開会にあたって行われた宣誓式(2017年、千葉県こども病院で)

 支援活動は、「病棟内活動」と「院外活動」の二つがあります。

 「病棟内活動」としては、季節に合わせた様々なイベントを企画・開催しています。入院生活は非日常的となるため、日常的経験を病棟に持ち込み、闘病中の子どもたちや家族のストレスを減らすことが目的です。紅組・白組に分かれて仮装レースや風船割りレースなどを行う「運動会」、仮装でゲームをした後に廊下をパレードする「ハロウィーン」、「豆まき」などがあります。

 食事制限がかなり厳しい患児が多く、食べ物への関心が高いので、制限に気をつけながら開催する「お食事パーティー」は一番人気です。すしは生ものが多いために禁止されていますが、マグロはツナ缶で、エビはゆでたエビをというように加熱加工したネタでの「回転ずしパーティー」は特に好評です。ほかに、お好み焼き、お菓子作り、そうめん流しなどを行っています。

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千葉県こども病院で毎年開かれているハロウィーンパーティー(2017年)

 治療の悪影響を防ぐため、管理栄養士とともに正しい食生活を学び、健康管理に役立てる「食育会」、患児の家族の意見や疑問、不安などを聞き取り、病棟への希望などがあれば、全体の意見として病棟に伝える「院内茶話会」も開催しています。

 そのほか、家族の相談を受けたり、患児の遊び相手をしたりすることもあります。家族が直接、医療側に伝えにくいと感じていることを代わりに医師や看護師に伝えたり、逆に医療の側から家族の本意が分からず、確認を依頼されたりすることもあります。

ワンちゃんの訪問で楽しい時間過ごす

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ワンちゃんが千葉県こども病院を訪れ、入院生活を送る子どもたちと触れ合う(2015年)

 千葉県こども病院では毎月1回、日本動物病院協会の支援を受けて5、6匹の犬が病棟を訪問する活動を行っています。犬やその飼い主さんとの触れ合いを通し、楽しい一時を過ごすことができます。それだけでなく、あいさつや感謝の気持ちを述べることなど、社会性を育むことにも貢献しています。

 また、千葉県こども病院の一室をお借りして、入院治療が終了した患児・家族そして小児がん経験者を対象とした患者談話室「いっぷく亭」を2017年から週1回開いています。延べ500人を超える来訪者となりました。相談事や不安を仲間に聞いてもらいたいとやってくる家族や小児がん経験者だけでなく、夜勤明けの看護師や医師なども立ち寄り、久しぶりの再会を楽しんでいます。

 有名校へ進学したものの登校拒否となった元患児が、経過観察の受診後に顔を出すようになりました。以来、継続して来訪し、談話室で勉強をするようになり、ついには登校を再開し、文化祭委員などをするようになったという成果もありました。「医師やスタッフの後押しで勉強することで、失いかけていた自信を取り戻した」と、お母さんは話していました。

先輩の小児がん経験者らと交流する「キャンプ」

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山梨・清里でのキャンプ。滝遊びで子どもたちは大喜び(2017年)

「院外活動」としては、年に2回、病気や治療法、日常生活の注意点などを学ぶ勉強会を開催しています。小児がんに関連する学会が開催される時にブースを設置し、会の活動などを紹介する活動を行っています。

 退院後に他施設の仲間や医療者、先輩の小児がん経験者たちと交流できる「キャンプ」や「ハゼ釣り大会」も好評です。年齢分けしたグループで話し合う機会を作り、それぞれの思いを仲間同士で語り合うことが、明日への大きな力となっているようです。

 復学・就職・結婚などに困難を感じる小児がん経験者への支援策が、「出前教室」です。会のスタッフが医師とともに学校や企業に伺い、小児がんに関する講演を行っています。参加者からは、「治癒率が高くなり、『小児がん=死』ではないことや、治療終了後も経過観察の必要があることなどを学べて良かった」という声が寄せられました。

 コロナ禍で、残念ながら開催できないイベントがあります。また、長い入院生活を強いられる子どもたちは、外の世界に接することが難しくなりました。そこで、病棟にいる子どもたちがパソコン操作をし、院外の世界を体験できる「遠隔操作ロボット」を購入しました。これを使い、東京の国立科学博物館で恐竜の化石などを見学してもらいました。博物館の専門家に質問もでき、とても楽しかったようです。

入院患児たちや家族が孤立しないように

 今後は、外の社会から隔絶された入院患児たちが孤立しないよう、遠隔操作ロボットを利用した活動を増やし、院内茶話会をより頻繁に行う予定です。また、退院後の子どもたち、小児がん経験者、その家族に対し、メールや電話による相談窓口があることを広く伝え、少しでも多くの声に耳を傾けるようにしたいと思います。さらに、社会一般の方々に向けた出前教室にも力を入れていきます。

認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ

 千葉県内の主な小児がん治療施設の医療者の呼びかけで1997年10月に設立された任意団体「菜の花会」が前身。2011年、「NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ」となり、14年に認定NPO法人化され、小児がん患児・家族、そして治療終了後の小児がん経験者への支援活動を行っている。

 会員数は約300人。千葉県こども病院、千葉県がんセンター、千葉大学病院小児科、成田赤十字病院小児科、帝京大学ちば総合医療センター小児科、松戸市立総合医療センター小児科と連携して活動している。

ホームページ  http://www.millefeuille.or.jp/

 このコーナーでは、公益法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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