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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

論争中の病とは? 誠に奇妙で納得のいかない話

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論争中の病とは? 誠に奇妙で納得のいかない話

 自分の領域外の知識や情報は、意識して取り込もうとしない限り通り越していきますが、実害はあまりありません。

 しかし、領域外の人たちの考え方を知ることで、自分の視野は狭かったと自覚することや、意外な共通項を見つけて参考になることがよくあります。

 先日、私どもの「NPO法人 目と心の健康相談室」主催の講座で、和光大学教授・一瀬早百合氏(社会福祉学)による講演「家族との葛藤と相談援助のあり方」を聴講し、大変参考になりました。

 一瀬教授の話は、社会福祉学でのトピックの一つである「論争中の病」を取り上げ、ここに属する病を持つと社会的に排除されがちで、家族との確執も生じ、障害受容に大きな影響を及ぼすという趣旨でした。

 この「論争中の病」(contested illness)という捉え方を私は初めて知ったのです。

 「論争中の病」とは、これがあれば診断根拠となるという生物学的指標(バイオマーカー)のない病のため、主として医療関係者や患者の間で論争が起こる病気のことです。代表例として化学物質過敏症、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群があります。

 科学的なエビデンス(根拠)を専ら重視する医師の中には、それを欠くとしてこれらの病気の存在自体を疑う向きはあるでしょう。

 私の外来には、眼球に異常がみられない視力低下、 羞明(しゅうめい) (まぶしさ)、眼部 疼痛(とうつう) などの患者が多数来診しますが、一般眼科医からは「病気はない」とされるケースが少なくなく、まさにこの論争中の病に属します。

 論争中ならまだよいですが、頭から症状の存在を否定するとか、心因性などとして軽視する医師もあることは確かなのです。

 エビデンスは大事ですが、それが得られないから病気は存在しないという判断は、明らかに誤りです。

 誤りが生じるのは、前回にも述べましたが、医療が主に医師目線で発展してきたためであって、当事者目線で進んでこなかった歴史の付けが回ってきたのだろうと思っています。端的に言えば、医療は医師のもので、決して民主的医療の歴史ではなかったということなのです。

 眼科でも、当事者がまぶしい、痛い、具合が悪いと言えば、もちろん医師は症状が存在する部位の器質的変化の有無や既知のバイオマーカーを調べます。ここで異常がない場合は、検出できないだけだと考えるのが正しい科学的態度であり、今の医学の診断能力、医療テクノロジーの限界に思いを致すべきです。医師が患者の症状を認めて、それを探求しようと 俎上(そじょう) に載せない限り、さらなる医学的進歩はありえませんから。

 医者同士で「論争」するならまだしも、症状や病気の存否を当事者と医師の間で論争するということ自体、つまり「論争中の病」という言葉が医学以外の世界で話題となっていること自体、誠に奇妙で納得のいかない話ではありませんか。

 その責任は、もちろん臨床医学の側に存在します。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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1件 のコメント

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全く正しい話です

患者

まさにその通りだと思います。友人が慢性的なめまいに悩まされているのですが、耳鼻科の医師は全くのヤブで、「眼振」なしと診断して仮病だと言わんばかり...

まさにその通りだと思います。友人が慢性的なめまいに悩まされているのですが、耳鼻科の医師は全くのヤブで、「眼振」なしと診断して仮病だと言わんばかりです。エビデンスを振り回す人間は信用できません。

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