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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

「おやすみなさい」と答えた子が3時間後、洗濯機の中で窒息死…同じ事故が起こり続けたのはなぜか?

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スーツケースに入り、「閉めて」と友人に…

 事例3:2005年10月、小学1年生男児。同じ学校の小学2年生の友人と、午後3時ごろから男児の自宅で遊んだ。両親は仕事で不在だった。捨てるために玄関付近に置かれていたスーツケースに男児が入り、「閉めて」と友人に頼んだ。友人は、閉めた後に鍵のダイヤルをずらしたため、開け方がわからなくなって、そのまま帰宅した。夜、帰宅した母親が、スーツケースの中でぐったりしている男児を見つけたが、まもなく死亡した。

 事例4:2016年4月、2歳男児。奈良県生駒市の自宅で、午後5時50分ごろ、男児がテレビをバンバンたたくので、父親はしつけのために、まず男児を、次に3歳の長女をプラスチックの収納ケース(横80センチ、縦40センチ、深さ30センチ)に入れ、外からロックして放置した。20~30分後に男児の意識がなくなっているのに気づき、110番したが、7時間後に死亡した。2人とも身長は90センチくらいあり、折り重ねるように押し込まれていた。父親は、「これまでも何度かやったことがある。殺すつもりはなかった」と供述。母親は、「いつものことで気にしていなかった」。

 また、韓国からの虐待のニュースですが、子どもは、どれくらいのスペースに入ることができるか、よくわかる事例があります。

 事例5:2020年6月、9歳男児。保護者は、罰するため、昼12時ごろ、男児を縦71.5センチ、横50センチ、幅29センチのスーツケースに3時間ほど閉じ込めた後、男児がスーツケースの中で失禁したため、午後3時30分ごろ、さらに小さなスーツケース(縦60センチ、横44センチ、厚さ24センチ)に移した。スーツケースの中で、男児が「息苦しい」と訴えたが、保護者はスーツケースに乗って数回飛び跳ねた。保護者は男児の反応がなくなると40分間放置し、午後7時25分ごろ119番に通報したが、すでに心停止状態だった。病院で治療を受けたが、2日後に低酸素性脳損傷により死亡した。

 これらの閉じ込められた事例について、子どもの年齢、身長、体重、子どもが入り込んだスペースの計測値、滞在時間を記録しておけば、窒息の状況が正確にわかり、予防策につなげることができます。

60年以上前は冷蔵庫や冷凍庫の中での窒息死多発

 狭い空間に閉じ込められなくても、酸素欠乏になることがあります。

 事例6:2005年12月。秋田県の泥湯温泉の駐車場近くで、硫化水素ガスがたまった雪穴に落ちた家族4人(夫婦と8歳、6歳の兄弟)が死亡した。硫化水素は空気より重く、酸素欠乏症が発生しやすい環境であった。

 また、在宅医療をしている医療的ケア児は、全国に約2万人いるとされていますが、気管切開のチューブが外れたり、人工呼吸器の接続が外れたりして、酸素欠乏になる事故が発生しています。

 60年以上前、放置されている冷蔵庫や冷凍庫の中に子どもが入って、窒息死する事例が多発したため、以後、冷蔵庫や冷凍庫は、中から開けることができるよう、磁気による開閉式になっています。釣り用の大型クーラーに子どもが入ることもあります。子どもが入ることができる大きなおもちゃ箱は、空気が通るよう穴を開けて使用する必要があります。

 子どもが入り込むことができるスペースがあって、空気を遮断してしまう場合には、閉じ込められないようにする装置の設置を義務付ける必要があるのです。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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