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宋美玄のわーままクリニック

妊娠・育児・性の悩み

産後の女性は「人生で一番幸せ」?…本当は心身、環境とも危機的 男性育休の拡大を!

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勤務先に育休を取る風土がない

 昨年秋に出版された「男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる」(小室淑恵、天野妙著 PHP新書)という本があります。男性育休について多角的に論じられていてとても分かりやすいので、私の職場に受診される妊婦さんの付き添いで来られたパートナーの方、先着50人にプレゼントをするという試みを行いました。それまでも、妊婦さんと一緒に来られるパートナーの方には、「育休はどうされるのですか?」と尋ねたりしていましたが、より深く育休について考えていただきたいと思ったからです。

 興味深かったのは、私がパートナーの方に男性育休の話をすると、妊婦さんは総じて「助かります」と、パートナーが育休を考えてくれることを歓迎していたことです。それまで、男性育休が話題になるたびに、インターネット上では「収入が少しでも減るのは困る」「夫に休まれても、世話をする対象が1人増えるだけで余計しんどい」という声もそれなりにありました。それが、今回、妊婦さんたちに尋ねると、「パートナーに休みを取ってもらいたい」「一人では不安」と答える方が多かったのです。

 パートナーには、取るつもりという方も、結構、いらっしゃいました。しかし、勤務先に育休を取る風土がないという方や、フリーランスや経営者なので育休がないという方もおられました。育休取得率が高い大手企業で、全員1週間しか取らせてもらっていないなどのタレコミをいくつか聞いたのも興味深かったです。

 その話題は気まずい、という反応の方も多く、ちょっと申し訳ない気がしたこともありますが、妊婦さんとパートナーの意識の差は埋めていきたいなと思いました。

男性側の職場が女性側の職場にフリーライド

 現状では、女性の育休取得率の方が圧倒的に高く、女性従業員数の多い会社は、人員の確保に苦労しています。育休明けも、家事・育児をそのまま母親が担うことになり、男性を多く雇用している企業は、従業員に家族が増えても影響は限定的です。共働き家庭が多い今の時代、それは、男性側の職場が女性側の職場にフリーライドし、コストの負担を免れていることにならないでしょうか。

 子供が生まれた時や、家族が増えた時には、性別に関係なく一定期間休むということになれば、就職や大学入試で性別が不利に働くこともなくなっていくのではないかと思います。

 コロナ禍で苦しい時期が続いていますが、「在宅勤務される男性が増え、孤立無援で育児をする時間が減った」「夫が飲みに行かなくなって、夕方以降は戦力になった」という声も聞かれ、悪いことばかりではないのかもしれません。男性育休について、政府が本腰を入れて改革することで、家庭での充実した時間が増えるといいなと思います。(宋美玄 産婦人科医)

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

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