常喜眞理「女のココロとカラダ講座」
医療・健康・介護のコラム
ものが二重に見える…動脈のこぶが神経を圧迫、破裂すればくも膜下出血に
眼科では異常見つからず
40歳半ばのKさんは、ものが二つにダブって見えると言って来院された。1週間ほど前からこの症状があり、眼科を受診したところ、眼に問題はないと言われ、様子をみていたが、改善せず不安になって来院された。眼科に行った時は、自分の気のせいかなと思うほどだったが、生活に支障が出るほどになってきたという。
頭痛やめまい、吐き気について伺うと、頭痛は少しあるが、片頭痛持ちであるため、いつもの軽い片頭痛程度だという。他に症状はなかった。血圧は低めで上が100、下が60ほどだ。会社の健診では糖尿病やコレステロールなど血管系の病気につながる異常を指摘されたことはない。
血液検査も「問題なし」
ものが二つにダブって見える症状を複視という。複視は脳神経の一つである動眼神経という神経に問題が起こった時に生じる。動眼神経は眼を動かしたり、光の調整をしたり、まぶたを開いたりする役割がある。
糖尿病や甲状腺機能 亢進 症などの病気でも起こる可能性があるので、まずは血液検査が必要だ。通常の健康診断の項目に甲状腺機能検査は含まれないため、Kさんに血液検査を行ったところ問題はなかった。
40歳代・女性に多いくも膜下出血
他に注意すべきは未破裂脳動脈 瘤 という病気だ。脳動脈瘤が破裂するのを「くも膜下出血」という。くも膜下出血は高齢者の病気と思っていらっしゃる方もいるが、好発年齢は40歳代で、しかも女性に多い。家系に脳動脈瘤の方がいると少し可能性が高くなる。Kさんにはそういう親族はいなかったが、脳血管を診断するMRA(磁気共鳴血管造影法)検査を受けてもらったところ、脳底動脈という場所に動脈瘤が疑われた。
カテーテルで治療
その後専門医を受診してもらい、未破裂動脈瘤が大きくなったため症状が出始めたことがわかった。専門医のもとでカテーテルという血管から管を入れて治療する方法を行ってもらい、くも膜下出血になることもなく、無事複視も治った。
ものが二つに見えて放っておく人はいないと思うが、ためらわずかかりつけの眼科医、内科医に相談してほしい。(常喜眞理 医師)
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