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精子から見た不妊治療

医療・健康・介護のコラム

不妊治療の第一歩はED克服と定期的な射精 精液の汚染にも注意

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精液は細菌に汚染されている! 

不妊治療の第一歩はED克服と定期的な射精 精液の汚染にも注意

写真説明=精液内に見られる、細胞上に繁殖した細菌のコロニー。おそらく、マスターベーション時にペニスを強く握り、はがれ落ちた尿道内皮細胞の上にできたと思われる

 せっかくマスターベーションの話をさせていただいたので、生殖補助医療を行う側から、お願いがあります。

 包茎などで、亀頭と包皮の間に ()(こう) がたまっている場合があります。恥垢は細菌の塊といっても差し支えありません。授精に用いる精液は、精子選別過程で細菌除去を行う必要がありますが、恥垢が混じると、細菌数が多すぎて除去しきれないことがあります。射精に先立ち、包皮から亀頭を露出して石けんで洗ってくださると、大変ありがたいです。

 精液を放置すると細菌が増えますので、射精後は1時間以内に精子を選別する必要があります。クリニックの採精室を利用した場合は問題ありませんが、ご自宅での採精をご希望になり、クリニックまで1時間以内に到着できない場合は、抗生物質を含む輸送用培養液を用います。

精液の輸送は人肌で

 もう一つ、温度も重要です。冬期に懐中カイロで保温して精子が死んでしまったり、夏期に保冷剤を使って精子が運動性を失ったりした例があります。精液の輸送は人肌でお願いします。

 射精ごとに精子数が変化する要因としては、禁欲期間よりもマスターベーションがうまくできたかどうか、のほうが重要です。すでにお話ししましたが、消費期限が切れた精子の排出を兼ねて、定期的にマスターベーションしていただくようお願いいたします。現在では、精液全量から精子を選別しますので、たくさん出していただくのがとても重要です。

毎週採精して、状態が良いときに保存

 この連載では、何度も精子の貯金(凍結保存)に触れました。ここでは、凍結保存の最も有効なやり方である、「精子のつまみ食い」をご紹介したいと思います。

 採卵は数か月に一度ですが、精子はもっと短い間隔(毎週)で得られます。図は、「精液の実力」が射精ごとに変動することをイメージ化したものです。単純に棒が長ければ「良い」とお考えください。

図は、「精液の実力」が射精ごとに変動することをイメージ化し

 奥様に問題がないと仮定すると、左端のいつでも精液の状態が良い夫婦はご家庭で妊娠します。一方、右端のいつも状態の悪い方は、何をやっても妊娠する可能性は低くなります。私たちが一番力を発揮できるのは、中央の射精ごとに精子の状態が変動する方です。一番悲劇的なのは、検査をした時は精子の状態が良かったのに、採卵日はどん底の状態だった時です。

 そんな悲劇を防ぐには、毎週採精して、精子の状態が良いときに貯金する、「精子のつまみ食い」がとても便利です。そして貯金額から、どの授精法が実施可能なのかを逆算し、そのうえで、奥様の体に負担がかかる排卵誘発や採卵を行うのです。(東京歯科大学市川総合病院・精子研究チーム)

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精子から見た不妊治療

兼子 智(かねこ・さとる)
東京理科大大学院、慶應大大学院修了。薬学博士、医学博士。東京歯科大市川総合病院産婦人科非常勤講師


黒田 優佳子(くろだ・ゆかこ)
慶應大医学部卒、同大学院修了。医学博士。「黒田インターナショナル メディカル リプロダクション」院長


萩生田 純(はぎゅうだ・じゅん)
慶應大医学部卒。博士(医学)。東京歯科大市川総合病院泌尿器科講師


中川 健(なかがわ・けん)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院副院長、泌尿器科部長、副リプロダクションセンター長


高松 潔(たかまつ・きよし)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院産婦人科部長、リプロダクションセンター長

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