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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

下山進さん新著「アルツハイマー征服」 認知症の治療薬開発をめぐる人間ドラマ描く

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下山進さん新著「アルツハイマー征服」 認知症の治療薬開発をめぐる人間ドラマ描く

 認知症の薬の開発は、苦難と失敗の歴史だ。だが、度重なる困難を乗り越えて、なお、認知症を根治させるという「希望」を求めて、薬の研究開発に取り組む人々がいる。ノンフィクション作家、下山進さんの著書「アルツハイマー征服」(角川書店)は、日本人の患者、研究者らを横糸としたアルツハイマー病研究をめぐる数十年に及ぶ人間ドラマだ。

物語は遺伝性アルツハイマーの研究から

 物語は、青森県に暮らす遺伝性アルツハイマーの患者、家族の話から始まる。遺伝性の患者はアルツハイマー患者全体からすれば一部に過ぎないが、患者、家族の協力と研究者の熱意によって得られた遺伝子変異の研究結果は、モデルマウスの開発をはじめとして、アルツハイマーの病態の解明、治療薬の研究に大きく貢献していることが紹介されている。

「アリセプト」とその後

 認知症の治療薬と言えば、日本の製薬企業エーザイの「アリセプト」などがよく知られている。だが、アリセプトは、あくまで病気の進行を遅らせる効果が期待される薬であって、根治させる薬ではない。

 しかし、根治治療薬の開発は、効果が見られないことや副作用などのため、ことごとく中止、撤退を余儀なくされてきた。それに伴い、2000年代初めからスタートした下山さんのアルツハイマーの取材そのものも、10年余りにわたって、いったん中断していたのだという。

「アデュカヌマブ」の承認は?

 それから十数年、新しい治療薬として現在、期待を集めているのが、エーザイと米製薬企業バイオジェンが共同開発している「アデュカヌマブ」だ。

 アデュカヌマブは2019年、臨床試験の中間解析の結果が思わしくなかったことから、一度は開発中止が発表された。ところが、約半年後、追加のデータを含めて臨床試験の結果を解析し直したところ、良好な結果が得られたとして一転、開発計画がよみがえるという、前代未聞の経過をたどっている。米食品医薬品局(FDA)へ承認申請された結果が近く出るとみられており、どういう判断が下されるのかが注目されている。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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