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演出家・作家 宮本亞門さん

一病息災

[演出家・作家 宮本亞門さん]前立腺がん(4)「上を向いていれば大丈夫」

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[演出家・作家 宮本亞門さん]前立腺がん(4)「上を向いていれば大丈夫」

 2020年2月。新作ミュージカルの仕事で、米国ニューヨークに滞在していた。前立腺がんの手術から9か月が過ぎ、尿漏れなど、手術後の不便さにもすっかり慣れていた。

 ある日、行きつけのレストランに入ると、いつもとは違う隅の席に通された。

 ちょうど、日本停泊中のクルーズ船で発生した、新型コロナの集団感染が報じられていた頃だった。

 日本人はそう思われているのか――。ショックとともに米国を離れたが、感染は瞬く間に世界中で拡大した。日本国内でも舞台の中止が相次ぎ、演劇界は混乱した。何よりも多くの人が命を落としていく。

 自分ががんになったこと、さらに予想もしなかった感染症の出現は、人の命がぷっつりと終わってしまう現実を突きつけてきた。病気で死を意識した時の孤独感、それを乗り越えた達成感はいつも自分の隣にある。

 今、できることは――。 自分の仕事は、音楽で勇気を広げられる。だったら、不安と不自由さに苦しむ人たちと、歌で思いを共有しよう。4月に動画サイトで「上を向いて歩こう」を歌い継ぐ企画を始めた。

 告知4日間で600人が歌の映像を届けてくれた。どの声もまっすぐ心に届いた。改めて確信した。

 上を向いてさえいれば、人間は絶対に大丈夫、と。

(文・染谷一、写真・和田康司)

演出家・作家  宮本亞門(みやもとあもん) さん(63)

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