産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
悩みを人に相談できない女性……母親のグチが無意識の領域にまで浸透
経済成長期のように男は仕事、女は家庭という時代は遠くなりつつあります。女性も経済的には自立するのがあたり前の時代です。33歳の児島亜希さん(仮名)もそんな一人。有名大学修士課程修了後、大手メーカー研究所に勤務。順調に主任研究員へと昇進しましたが、そこで壁にぶつかりました。チームを率いての研究の完成や若手研究員の指導が課せられたのですが、うまくいかず、落ち込んでいます。思い余って、ストレス相談に訪れたのでした。話を聞くと、児島さんは人に相談することができないタイプで、その背景には母親が強い影響を与えていました。以下、私とのやり取りです。
昇進して仕事に壁
私 :産業医の夏目です、よろしく。相談室は初めてですか?
児島さん:そうです。研究所新規製品開発部で主任研究員をしています、児島です。悩みがあり、相談に来ました。
私 :仕事の悩みでしょうか?
児島さん:そうです。4月に主任研究員(課長補佐)に昇進しました。そうなると、後輩の指導や6人の製品開発プロジェクトチームで協働して仕事をしなければなりません。
私 :それで?
児島さん:指導ですが、なかなか理解してくれません。また、プロジェクトは協調しながら行うのが難しいですね。それで悩んでいます。
私 :うまくいかなければ上司に相談すれば?
児島さん:相談はしたくありません。
私 :えっ、なぜでしょうか?
自立した人は相談をしない?
児島さん:相談は、自立した人がすることではないでしょう。自立した女性になろうと努力し、研究員になって実現しましたから。
私 :自立した女性って、自分で目指したの?
児島さん:違います。母の口癖でした。
私 :それで。
児島さん:実は……。
私 :安心してください。守秘義務がありますから。
児島さん:父は銀行役員で仕事一筋の人。家庭はほったらかしの暴君でした。母は専業主婦で、働いたことはない人です。
私 :お父さんは仕事一筋で横暴。お母さんは専業主婦か。
児島さん:母は横暴に耐えた。父が浮気した時、離婚を考えたようなんですけど、母には収入がないので、「がまんするしかない。耐えるだけ」と話していました。
私 :お父さんに、耐えに耐えたわけか。次回、また来てくださいね。
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