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ワクチン接種管理に2システム…対象者把握と流通
新型コロナウイルスのワクチン接種計画を巡り、政府内や自治体に懸念が広がっている。高齢者への接種が迫る中、河野行政・規制改革相が接種者を把握する新たなシステムの導入を突如、打ち出したためだ。
自治体、実務増を懸念
■一元化

「リアルタイムで情報をとることは自治体も必要になってくる。追加負担が出ないように対応したい」
河野氏は27日、新システムの意義を記者団にこう強調した。
新システムでは、市区町村が全国民に割り当てられたマイナンバーと、接種対象者に発行されるクーポン券の番号を事前登録する。医療機関が接種後、クーポン券とワクチンの情報をシステムに入力することで、接種状況を一元的にデータベース化する構想だ。
厚生労働省は当初、市区町村ごとの予防接種台帳を通じ、接種記録を管理する方針だった。しかし、台帳では全国的な接種の進み具合が即座に分かりにくい。情報更新に数か月かかり、1回目の接種後に引っ越しをした人は2回目の接種が遅れる恐れもあった。
このため、河野氏は親しい平井デジタル改革相から助言を受け、マイナンバーを活用する新システムの構築を25日に発表した。知名度の高い小泉環境相と協力し、接種への国民の理解を深めたい考えだ。
■複雑化
一方で、田村厚労相は昨年からワクチン流通を管理する仕組みとして、「ワクチン接種円滑化システム」(V―SYS=ブイシス)の構築を進めている。ワクチンの卸業者が配送状況、医療機関が在庫量をそれぞれ入力することで、膨大な量のワクチンを円滑に行き渡らせる狙いがある。
厚労省はV―SYSの情報を活用し、接種希望者に接種会場や予約状況などを案内するウェブサイトの開設を準備している。サイトで自治体名を選ぶと会場が一覧で示され、空き状況や連絡先、接種できるワクチンの種類を確認できる。
政府は、V―SYSと新システムを連携させ、データ入力作業の軽減に努めたい考えだ。しかし、新システムの全容はいまだ明らかになっていない。個人情報の扱いやセキュリティー対策など課題も山積だ。
厚労省幹部は27日、「新たなシステムの利点は分かるが、いきなり慣れないものを使うことで混乱が生じかねない」と述べた。自民党内からは「所管の違うシステムが並立し、政府の計画が複雑化してしまった」(厚労相経験者)との批判が出ている。
菅首相と27日に首相官邸で面会した全国市長会長の立谷秀清・福島県相馬市長は、「現場の実務が増え、スピーディーな接種に支障があるとの懸念の声が上がっている」と記者団に指摘した。首都圏のある首長は「国からの情報がない。今から作って間に合うのか」と不安を口にした。