子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
皮膚のトラブル(9)脱毛症 劣等感やストレスでさらに悪化…長引くなら専門医へ
皮膚のトラブルでは、大阪医科大の森脇真一教授(59)に聞きます。(聞き手・東礼奈)
子どもの脱毛症では、「円形脱毛症」と「抜毛症」の患者が外来に多く訪れます。
円形脱毛症は、頭髪に円形か 楕円 形で境界がはっきりした脱毛斑ができます。脱毛斑の数が増えれば、互いにくっついて大きくなり、髪の毛が全てなくなる場合もあります。進行期には、まゆ毛やまつ毛など、頭髪以外も抜けます。
毛をつくる組織「毛包」が一時的な免疫異常で攻撃されるのが原因で、精神的、肉体的なストレスが契機になるとされます。多くは自然に治りますが、髪がどんどん抜けるか、軽く引っ張るだけで髪が抜けるようになれば治療の対象になります。
治療では、血流を増やすカルプロニウムや、ステロイドを塗るか、炎症を抑えるセファランチンやグリチルリチン、抗ヒスタミン薬などを内服します。治りにくい場合、化学物質でわざと皮膚炎を起こす局所免疫療法が特に幼い子に有効で、10歳以上には紫外線を照射する治療法もあります。いずれも免疫異常の抑制効果が期待されます。
一方、無意識に髪を引っ張ることで手が届く場所に脱毛斑を生じるのが抜毛症です。「抜毛癖」とも呼ばれ、発症が幼児期なら徐々に軽快します。しかし、学童期以降では家庭や学校でのストレス、欲求不満などが誘因の難治例が多く、時にメンタル面のケアが必要になります。
境界が不明瞭で、形が不ぞろいの脱毛斑が多発する場合は、ホルモン異常や 膠 原病などを伴っていないか血液検査で確認します。脱毛症の子は劣等感やストレスによって脱毛がさらに悪化する悪循環に陥るので、数か月で改善しなければ皮膚科専門医を受診してください。
【略歴】
森脇真一(もりわき・しんいち)
皮膚科専門医。大阪医科大卒。京都大、浜松医科大などを経て2009年から現職。医学博士。
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