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陽性急増なら大混乱も…広島市80万人にPCR方針

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陽性急増なら大混乱も…広島市80万人にPCR方針

 新型コロナウイルスの感染拡大で、広島県が打ち出した、広島市中心部の住民ら80万人という異例の規模でのPCR検査方針が波紋を広げている。無症状の患者らの把握に一定の効果があるとみられる一方、短期間で多数の患者の対応に追われる事態が予想され、広島市は「まずは受け入れ態勢を拡充すべきだ」と主張。ほかの自治体でも効果を疑問視する声が出ているが、県は2月上旬にも実施する構えだ。

■海外を参考

 広島県によると、広島市内の全8区のうち、感染者が多い中、東、南、西の4区の住民60万人と、区外からこれらの4区に来て、働く20万人を対象とする。

 広島市では昨年12月以降、感染が急拡大し、県は同月、感染状況が最も深刻な「ステージ4」相当と判断。その後、状況は落ち着いたが、湯崎英彦知事は1月19日の記者会見で「無症状者は、気付かないまま感染させる可能性が高い。大規模検査が、感染拡大を抑え込む唯一残る方法だ」と強調した。

 検査は任意で無料とし、希望する対象者には、特設会場で2月上旬から受けられるようにする方向で、期間は1~2か月を想定。数億円規模の費用は国の臨時交付金を充てる考えだ。

 知事が参考にしたのは海外の対応で、中国では複数の感染者が確認されると、該当地区の全住民を対象にPCR検査を実施。昨年10月には、青島市で全住民約950万人を対象とした。

■精度に課題

 こうした県の検査方針に懸念を抱くのは、対象地域となる広島市だ。

 市によると、市の1月のPCR検査件数は、1日平均約180件(24日現在)。4区の全住民らを対象にすると、大幅に超える検査件数となることが予想される。

 唾液などを使うPCR検査は精度に課題があり、感染していても「陰性」と判定される「偽陰性」や、逆に感染していないのに「陽性」と判定される「偽陽性」が出てしまうとされる。

 「偽陽性」を含めた多数の陽性者と、濃厚接触者の特定作業など保健所の負担増は必至で、市幹部は「患者の受け皿や保健所の人員の準備も整わないまま突き進めば、市内は大きな混乱に陥りかねない」と話す。

 県は、無症状や軽症の人向けの宿泊療養施設として約1000室を確保し、24日現在、1割強の125室が埋まる。県は、さらに400室増やす計画を示しているが、最大80万人規模の検査で生じる事態に対応できるかは不透明だ。

■大阪は高齢施設重点

 緊急事態宣言発令中の自治体では冷めた見方が多い。

 兵庫県の井戸敏三知事は18日の会見で「陰性となっても、検査時点での『陰性証明』でしかなく、どれだけ効果があるのか、期待はしにくい」と話す。大阪府の吉村洋文知事は「一斉にできれば感染症対策として効果があるかもしれないが、希望者だけの検査になってしまったり、実施に時間がかかったりすれば、感染は広がる」と指摘。府は、高齢者施設に絞った検査体制を強化する方針で、21日に施設などからの検査を専門に請け負う検査センターを設置した。

 立命館大の早川岳人教授(社会学・公衆衛生学)は、大規模なPCR検査について、「感染症対策の見地からは感染拡大の防止に意義がある」とした上で、陽性者の療養先と疫学調査に関する課題を挙げた。

 「無作為にやると、自覚がなかった無症状の人でも陽性判定されるはずだが、自宅療養の態勢や宿泊施設の確保はできているのか。最近、自宅療養中の死亡事例が相次いでおり、検査後のフォローが手薄なら、社会不安を招く。また濃厚接触者を特定する疫学調査をやろうとすると、保健所はパンクする。検査と医療は車の両輪の関係で、バランスを保つことが求められる」

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