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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

母親が操作した駐車装置に3歳児が挟まれ…続発する死亡事故を防ぐには

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 われわれの身の回りには、動く機械がたくさんあります。首や胸郭が機械に挟まれると重大事故に至ることがあります。

母親が操作した駐車装置に3歳児が挟まれ…続発する死亡事故を防ぐには

イラスト:高橋まや

防火シャッターに首を挟まれる

  事例1 :2006年6月、小学1年生男児。新潟県五泉市の小学校で、放課後、同校に通う姉ら約20人と講堂で遊んでいたところ、シャッターが下り始めた。児童数人が渡り廊下に出ようと、その下をくぐりぬけ、続いて男児もくぐろうとしたが、ランドセルが引っかかり、防火シャッターと床のあいだに首の辺りを挟まれ、倒れ込んだ。男児は病院に運ばれたが、意識不明の重体。当時、業者の2人が校内の防火設備を点検中であった。シャッターは電動式で幅4.5メートル、高さ2.5メートル。点検は午後3時ごろに開始。本来はシャッターが下りないようにして点検することになっていたが、事故が起きたシャッターのほか、校舎2階の防火扉とシャッター3か所も同時に下りたという。

 同様の事故は、それまでに何件も起こっていました。1982年5月には東京都板橋区の小学校で、87年3月には長野市の小学校で、89年3月には埼玉県蓮田市の中学校で起こっており、98年4月には浦和市の小学校で3年生男児が防火シャッターに首を挟まれ、死亡しました。ガイドラインが作成されましたが、2004年6月には所沢市の小学校で、そして、上記の事例1が起きました。

小学生に「危険性を周知徹底」できるの?

 事故が起こるたび、文部科学省から「各学校において、防火シャッターの設置位置、役割、作動状況及び危険性等について児童生徒等に繰り返し認識させ、特に、小学校では、低学年の児童による事故の発生が多いことから、入学後できるだけ早い時期に危険性等について周知徹底するようお願いします」といった通知が出されました。しかし、小学生に危険性を繰り返し教える時間を確保することができるのでしょうか? 周知徹底と書いてありますが、具体的にどうすれば周知徹底できるのでしょうか?

 生徒は毎年変わる、先生も変わる、変わらないのは防火シャッターだけです。このような事故を予防するには、閉鎖作動時の危害防止機構を学校管理下のすべての防火シャッターに設置することです。そうすれば、危険性を周知徹底する必要はなく、先生も生徒も防火シャッターのことなどまったく気にしないで、学校生活を送ることができます。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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