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認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア

医療・健康・介護のコラム

実家に駆けつけ第一発見者に 現実感なく「刑事ドラマみたい」…さよなら母さん(上)

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実家に駆けつけ第一発見者に 現実感なく「刑事ドラマみたい」…さよなら母さん(上)

漫画・日野あかね

 ヨミドクター読者の皆さん、先月は休載となり失礼しました。2か月ぶりのごあいさつとともに、お知らせしたいことがあります。

 2020年12月、この連載でもたびたび様子をお伝えしてきた母さんの介護が終わりました。あまりにも突然に、母さんは天国に旅立ってしまったのです。

弁当の配達員が異状を察知

 この日午後2時過ぎに携帯が鳴り、ケアマネジャーから「宅配弁当の配達スタッフから連絡があって……」と告げられました。

 足腰が弱り、買い物や料理が難しくなった母さんは、半年ぐらい前から夕食だけ宅配弁当を利用していました。誰にでもガンガン話しかける性格ゆえ、配達スタッフとのちょっとした会話を楽しみに、お弁当が到着する時間に玄関先で待つのが日課になりました。ところがその日は、配達スタッフが何度、母さんを呼んでも反応がなく、玄関の鍵も掛かったままだというのです。

 すぐに母さんの携帯と実家に電話をしましたが、どちらも呼び出し音が鳴り続けるばかり。悪い予感が頭をよぎります。あと30分で帰宅する息子のたー君を待ちつつ、ご近所さんに母さんの様子を見てきてもらうよう、お願いしました。

浴槽の中で…

 15分後、ご近所さんから「外から何度も呼んでいるけど、反応がない」との連絡。嫌な予感が膨らんでいきます。待ちきれなくなった私は、自転車で小学校までたー君を迎えに行くことに。途中でたー君を見つけ、ざわざわする気持ちで実家へ急ぎました。

 2時45分、実家に到着。玄関先で待っていたご近所さんが見守る中、鍵を開け中に入ると、昼間なのに居間の電気がついています。ベッドの上には、脱ぎ捨てられた母さんの服、畳まれたパジャマ、未使用のオムツ。これを見た時点で、私は「あぁ……」と、すべてを察しました。覚悟を持って「母さん!」と叫びながら、お風呂場のドアを開けると、浴槽の中に変わり果てた母さんの姿があったのです。

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認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の日々を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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2件 のコメント

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心よりお悔やみ申し上げます

ばっち

杏里さん、この度のお母さまの突然のご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。今は混乱と疲労でどれほど心身が高揚した状態におられることか。杏里さんのご心...

杏里さん、この度のお母さまの突然のご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。今は混乱と疲労でどれほど心身が高揚した状態におられることか。杏里さんのご心痛 お察しいたします。また、お弔いと一連の手続きが終わった後にお父さまやお子さまを支えながら、お母さまの不在がひしひしと胸に迫ってくる時期があるでしょう。私の父は二度の原発性のがん発症から5年を目前にして、母と出かけたささやかな旅先の異国のバスの中で心臓発作により帰らぬ人となりました。突然家族を亡くした者たちの後悔と苦しみは長く心をさいなみます。どうしても後回しになりがちですが、どうぞ杏里さんご自身のご健康を一番大切になさってくださいませ。岡崎家のケアは杏里さんご自身のセルフケアが加わったので、これからもトリプルケアなのですよ。お話好きのお母さまは、これからもきっと杏里さんの支えになってくださいます。そしてこの記事の続きは杏里さんがよいと思われるタイミングでお聞かせください。心が引きちぎられるようなつらい記憶を、今すぐもう一度文字にして報告する必要はありません。地球の裏側から杏里さんご家族のみなさまのことを思っています。少しでもお休みになれますように。

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大変でしたね

にゃま

初めて投稿します。私にも発達障害の娘がいて、実家の母は認知症やいろいろな病で10年前に他界はしておりますが、他人事ではないと感じて毎回拝読してお...

初めて投稿します。私にも発達障害の娘がいて、実家の母は認知症やいろいろな病で10年前に他界はしておりますが、他人事ではないと感じて毎回拝読しております。本当に大変でしたね。きっと今もいろいろな事で忙しいと思います。上手く伝える事ができないのですが、杏里さん、無理なさらないで下さいね。

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