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大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

脚の痛み(11)腰か股関節か、原因の診断に悩むことも…症状は詳しく伝えて

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  このシリーズでは、関節外科が専門で関西労災病院(兵庫県尼崎市)副院長の津田隆之さんに聞きます。(聞き手・長尾尚実)

脚の痛み(11)状況など詳しく話して

 脚の痛みが腰の骨(腰椎)の変形やずれに由来するか、股関節の変形によるものかは、専門医でも診断に悩むことがあります。高齢者のなかには腰と股関節の両方が悪くなっている人も多く、どちらが強い痛みの原因になっているのか、手術など根本的な治療が必要なのかについて適切に見分けなければなりません。

 67歳の女性の例を見てみましょう。女性は右脚が痛く、当初はかかりつけ医で腰椎が原因と診断されました。別の病院で腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けても改善せず、3か月後に右の股関節に痛みが出てきました。当院で詳しく調べたところ、ようやく原因は股関節の変形によるものと分かりました。痛みが次第に強まったため、2年後に人工股関節を入れる手術を行いました。

 当院では年間約200件の人工股関節手術を行いますが、その中に最初は背骨の神経の通り道が狭くなる腰部脊柱管 狭窄きょうさく 症など、腰の病気と診断された患者さんも5人程度います。患部が腰だと、太ももの裏側や すね より下の部分の外側などの痛みが典型的ですが、膝などが痛むこともあり、診断が難しいケースがあります。

 画像診断と症状が必ずしも一致しないことにも注意が必要です。腰の磁気共鳴画像(MRI)による検査で、脊柱管が針穴のように細くなっていても症状のない人もいます。股関節の変形も、初期ならレントゲンで異常の見つからない場合もあります。問診や診察も合わせた慎重な判断が大切です。

 医師の診察を受ける時は、痛む場所やどんな状況で痛むかなどを詳細に話してください。別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう。

津田隆之さん

【略歴】
 津田 隆之(つだ・たかゆき)
 三重県多気町出身。1982年、大阪大医学部卒、90年、同大学院修了。星ヶ丘厚生年金病院(現・JCHO星ヶ丘医療センター)整形外科部長、箕面市立病院医務局次長などを経て、2017年4月から現職。専門は関節外科、骨粗しょう症の疫学。市民向け講演会などで、脚の痛みを起こす病気や治療法、転倒予防について解説している。

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