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肉の摂取で男性の死亡リスクが上昇 国がんの多目的コホート研究JPHC Study

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 国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループは、食事アンケートに回答した約9万人を長期間追跡した多目的コホート研究JPHC Studyで、肉類摂取と死亡リスクとの関連を調べた結果を PLoS One(2020;15:e0244007) に発表。男性では、肉類全体および赤肉の摂取量が最も多いグループにおいて、全死亡と心疾患死リスクが高かったことを報告した(関連記事「 大豆食品摂取量と乳がんリスクは関連せず 」「 発酵性大豆食品で全死亡リスクが低下 」)。

11地域、約9万人の男女を対象に検討

肉の摂取で男性の死亡リスクが上昇 国がんの多目的コホート研究JPHC Study

※画像はイメージです

 わが国では、食生活の欧米化に伴い1970~2006年に肉類の摂取量が約2倍に増加したといわれる。肉類による動物性脂肪や蛋白質の摂取増加が1960年代以降における日本人の脳卒中減少に貢献したとされる一方で、欧米諸国では赤肉や加工肉の過剰摂取によるさまざまな疾病リスクの上昇が報告されている。しかし、これまで肉類摂取と死亡リスクについて、日本人を対象とした研究報告は少なく、よく分かっていなかった。そこで研究グループは、JPHC Studyのデータを用い肉類摂取と主要死因別死亡との関連について検討した。

 対象は、1995年と1998年に11保健所(岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田:呼称は2019年現在)管内に在住し、食事アンケートに回答した45~74歳の男女約9万人。2011年まで追跡した結果に基づき、肉類摂取と死亡リスクとの関連を調査した。

 今回の研究では、調査開始時に行った食事アンケートの結果を用いて、肉類の総摂取量や1日当たりの赤肉(牛・豚)、加工肉(ハム・ソーセージなど)、鶏肉の摂取量で四分位に分類。肉類全体の摂取量が最も少ない第1四分位群を参照として、その他のグループの死亡リスクを男女別に調べた。解析に当たり年齢、居住地域、喫煙状況、飲酒状況、身体活動、肥満度、糖尿病や高血圧症の既往の有無、総エネルギー摂取量、総脂肪摂取量、野菜・果物・魚・乳製品・卵・食塩の摂取量を調整した。

男性では肉類および赤肉の摂取が多いほど死亡リスクが高い

 解析の結果、男性では肉類全体の摂取量の第1四分位群に対して、第4四分位群では全死亡リスクが有意に高く、赤肉でも第4四分位群で全死亡リスクが有意に高かった。一方、女性では、肉類摂取による全死亡リスクとの関連は見られなかった (図1)

図1.全体および赤肉の摂取量と全死亡リスクの関連

肉の摂取で男性の死亡リスクが上昇 国がんの多目的コホート研究JPHC Study

 さらに、肉類摂取と原因別死亡を検討したところ、男性では肉類全体および赤肉の摂取量の第1四分位群に対して第4四分位群で心疾患死のリスクが有意に高かった。女性では、肉類全体および赤肉の摂取量の第4四分位群で、脳血管疾患死リスクが有意に低かった (図2)

図2.肉類摂取量と原因別死亡リスク

肉の摂取で男性の死亡リスクが上昇 国がんの多目的コホート研究JPHC Study

(図1、2とも国立がん研究センタープレスリリースより引用)

 今回の知見を踏まえ、研究グループは「男性では、肉類全体および赤肉の摂取量が最も多いグループにおいて、全死亡と心疾患死のリスクが高かったという結果は、欧米や中国の疫学研究をまとめたメタ解析で、赤肉の摂取量が多いと全死亡リスクが高まるという報告と一致している。これまでの研究でも、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量が多いと、心疾患のリスクが増加することが報告されていることから、本研究でも同様の関連が示されたと考えられる。一方、鶏肉の摂取量の多さはがんの死亡リスク低下と関連していたが、詳細なメカニズムは明らかでない」とした。「女性では、肉類全体および赤肉の摂取量が多いグループで、脳血管疾患による死亡リスク低下との関連が見られた。肉類は主要な蛋白源であり、適量の蛋白質摂取は血圧を適正に保ち、脳卒中を予防すると報告されている。さらに、女性は男性に比べ肉類全体の摂取量が少ないため、過剰摂取の影響が現れにくいと考えられた」と述べている。

 同研究グループは研究の限界として、肉類の摂取量は1回のアンケート結果のみに基づいており、追跡中の食事の変化については考慮していないことなどを挙げている。(編集部)

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