メディカルトリビューン
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世界の心血管疾患が30年間で倍増 世界疾病負担研究(GBD)2019
米・University of Washington School of MedicineのGregory A.Roth氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2019のデータを用いて1990~2019年の世界における心血管疾患(CVD)の発生動向を解析した。この30年間で世界のCVD患者数(prevalent cases)は2億7,100万例から5億2,300万例にほぼ倍増し、2019年にはCVD死が世界の死亡全体の約3分の1を占めたとJ Am Coll Cardiol( 2020年12月3日オンライン版 )に発表した。
世界のCVD死亡数は約1.5倍に
Roth氏らはGBD2019の1990~2019年のデータを用い、CVD死の原因疾患13種類および危険因子9種類を含む、CVDによる疾病負担の動向を解析した。
その結果、世界のCVD患者数は1990年→2019年で2億7,100万例〔95%不確実性区間(UI)2億5,700万~2億8,500万例〕→5億2,300万例(同4億9,700万~5億5,000万例)と約2倍に増加。世界のCVD死亡数も同期間で1,210万例(同1,140万~1,260万例)→1,860万例(同1,710万~1,970万例)と着実に増加した。2019年にはCVD死が世界の死亡全体の約3分の1を占め、30~70歳でのCVD死が610万例に上った。
また、世界の障害調整生存年数(DALY)および損失生存年数(YLL)も1990年→2019年で大幅に増加し、障害生存年数(YLD)は同期間で1,770万(95%UI 1,290万~2,250万)→3,440万(95%UI 2,490万~4,360万)と約2倍に増加した。
CVD死の49.2%が虚血性心疾患、35.2%が脳卒中
2019年におけるCVD死の原因疾患の割合を見ると、虚血性心疾患(IHD、49.2%)と脳卒中(35.2%)が合わせて84.4%と大部分を占めていた (図1) 。
図1.CVD死の要因別割合
2019年のIHD患者数は1億9,700万例(95%UI 1億7,800万~2億2,000万例)、IHDによる死亡数は914万例(同840万~974万例)で、同年の脳卒中患者数は1億100万例(同9,320万~1億1,100万例)、脳卒中による死亡数は655万例(同600万~702万例)だった。
日本では年齢調整死亡率が6分の1に
国別で見ると、2019年のCVD死亡数が最も多かったのは中国、次いでインド、ロシア、米国、インドネシアの順だった。また、CVDによる年齢調整死亡率はフランス、ペルー、日本で最も低く、これらの国では2019年には1990年と比べて6分の1に低下していた (図2) 。
図2.CVDによる年齢調整死亡率の変化
日本ではさらに、CVDおよびIHDによる年齢調整DALY率、CVD危険因子のLDLコレステロール高値およびBMI高値による年齢調整DALY率が最も低かった。
COVID-19パンデミック下でもCVD対策は重要
Roth氏らは「CVD患者数は人口の増加と高齢化により、今後も大幅に増加すると考えられる」との見解を示し、「心血管の健康を維持して健やかに老いることに、いっそうの注意を払う必要がある。低費用で実現可能なCVD予防・管理戦略の策定も重要だ」と述べている。
さらに、「現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下では超過死亡率が高くなっているが、COVID-19の影響だけでなく、パンデミック対策のために医療提供体制と受診行動が変化したことによるCVD発症増加の影響も大きい可能性がある」と指摘し、「世界各国の健康的で持続可能な開発を維持するため、世界的なCOVID-19パンデミック下においてもCVDによる障害と早期死亡の減少に努めるべきである」と締めくくっている。(太田敦子)
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