渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」
医療・健康・介護のコラム
子どもの食べ方や口呼吸、歯並びの問題は生涯に影響する……口腔機能発達不全症の見つけ方は?

口の機能が原因で、食べたり話したりすることに問題を抱えている子どもに「 口腔 機能発達不全症」という病名があります。食べるのに時間がかかる。6歳を過ぎてもしゃべり方が舌っ足らずであったり、やせすぎたりということの原因が、実は口の機能にあるという場合の歯科の診断名です。とは言っても、3年前にできたばかりの病名で、聞いたことのない人も多いはず。しかし、放置した場合、生涯にわたる影響が残ることもあるといいます。そこで日本小児歯科学会は、子どもの口の機能の問題を広く知ってもらおうと、2月17日まで 学会ホームページ でウェブ版市民公開講座の動画を公開しています。どういう病気なのか。同学会前理事長で神奈川歯科大学教授の木本茂成さんに聞きました。(聞き手・渡辺勝敏)
幼稚園や保育園でお昼の時間に一人だけ食べ終わらない……食べる機能に注意を
――食べたり、話したりする機能に問題がある、というのはどのような状態を指しているのですか。
例えば、幼稚園でみんなが弁当を食べ終わっても、いつまでも食べていて時間がかかるというお子さん。「うちの子は食が細いんだ」ですましているかもしれません。ですが、中にはうまく食べられないという子どももいます。ひとつは、虫歯で奥歯が壊れていてかめないから時間がかかるような歯に問題がある場合。そのほかには、離乳の段階できちっとステップを踏んでいないために、かんで飲み込む機能がちゃんと獲得できていない場合があるんです。
――むし歯があってかめないというのは、親が口の中を見てもわかりそうですが、離乳に関係して食べる機能が獲得できていないというのはどういうことでしょうか。
平均すると1歳半くらいで最初の奥歯がかみ合うようになり、このころに離乳を完了します。しかし、歯が生える時期は個人差が大きくて、まだ、十分にかめないのに、「1歳半だから食べられる」と大きめの食物を与えると、かんで飲み込むのではなく、丸飲みの習慣ができてしまうことがあります。また、飲み込む前には、食べ物の塊を唾液と混ぜて舌で奥の方に送り込むわけですが、舌の動きに問題があってうまくできない子がいるんです。
離乳や舌の構造の影響が出る場合も
――食べる機能の問題は、むし歯以外では、離乳と関係することが多いのですか。
その子の歯の生え方に合わない食物を与えて、かむ、飲み込むがうまく身につかないという離乳も原因のひとつです。そのほかにも、舌の下側の中央にある筋、舌小帯が短いお子さんがいて、それが原因の場合もあります。舌の動きが不自然になるため食べるのが遅く、舌っ足らずの発音がなかなか抜けないですね。だいたい6歳ぐらいまでには発音の機能はできあがってくるものです。
――舌小帯が短いことがわかったらどのような治療をするのですか。
麻酔をして舌小帯を切って、動きやすくします。発音に問題があれば、言葉の練習もします。「5歳を過ぎても舌っ足らずで」と受診されたお子さんがいて、舌小帯が短いので治療をしました。すると、発音はもちろん良くなるのですが、もりもり食べるようになって、3か月で体格もひと回り大きくなりました。やせ気味だったのは、舌に問題があったわけです。逆に肥満の原因が、かまないで食べる丸飲みの習慣の可能性ということもあります。
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