渡辺専門委員の「しあわせの歯科医療」
医療・健康・介護のコラム
子どもの食べ方や口呼吸、歯並びの問題は生涯に影響する……口腔機能発達不全症の見つけ方は?
子どもの口呼吸は歯並びにも影響する
――食べるのに時間がかかるとか、やせや肥満も口の機能が原因という場合があるのはよくわかりました。ほかにも問題はありますか。
もうひとつ大きな問題は口呼吸なんです。口呼吸が習慣になっていると、あごの発達や歯並び、かみ合わせに異常を作ってしまうんです。いわゆる出っ歯も口呼吸と関係していますが、ご家族の方が気づかないことも多いんです。
――口呼吸だと、口が渇いて、むし歯になりやすく、風邪などの感染症にもかかりやすいという話は聞きますが、子どもの場合は歯並びにも影響してくるのですか。
口を結んでみると、舌は上あごに軽く密着していますね。この状態で鼻から呼吸するのが理想的な形です。この状態に即して、口の内外の筋肉の作用を受けながら歯並びができてきます。ところが、口をポカンと開けている口呼吸のお子さんの場合、舌は下側についているので、上あごの筋肉のバランスが変化して、前後に細長い歯並びになってしまいます。下あごとかみ合わなくなる出っ歯です。
口呼吸の習慣が身についてしまうことも
――かみ合わせを作るためにも、口呼吸はよくないわけですね。では、どうして口呼吸になってしまうのですか。
アレルギーなど鼻炎があって鼻が詰まって口呼吸になる、という耳鼻科の問題もひとつはあります。しかし、鼻炎がなくても口で呼吸する癖になっているお子さんもいるんです。習慣性口呼吸と言います。早めに治さないと、顎の発達や、かみ合わせ、歯並びにも大きく影響してきます。
――習慣性の口呼吸に気づいたら、どのような治療をするのですか。
唇の筋肉を鍛えて、口を閉じる訓練があります。おしゃぶりのような専用の器具を口でくわえて、お母さんが「1、2、3」と言って引っ張ってゆるめる。前、左右10回を1日3セットやってください、といった形です。口のリハビリですね。口腔機能発達不全症という診断がつけば、保険で指導が受けられることになっています。
口腔機能が不十分だと、高齢になった時に低下の影響が大きい
――子どものころの口の機能の問題がどうして生涯の健康に影響してくるのですか。
口の機能というのは、乳児期から6歳ころまでの幼児期に急激に伸びて、思春期を経て成人までに身につけます。そして老年期になると、むし歯や歯周病で歯を失い、飲み込む筋力の低下から 誤嚥 性肺炎を起こすとか、口の機能が低下してきます。高齢期には口腔機能低下症という病名があります。高齢期にはどうしても口腔機能は低下してしまうので、成人期までにできるだけ口腔機能を高めておきたいわけです。生涯の健康に影響するというのは、子どもから成人になるまでに、十分に口腔機能を高めておかないと、年を取って低下が始まると影響が大きくなるという意味です。
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