文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

薬剤師、僧侶、がん患者として 患者と家族が話し合える場をつくる 最期の時間を自分らしく過ごすために

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

会でのやりとりを通じて自分の言葉で語れるように

id=20210113-027-OYTEI50003,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

セミナーはオンラインでも開催している

 具体的な活動として「がん患者と並走する家族の心得セミナー(13回シリーズ)」を、2020年11月から21年3月まで開催している。インターネットによる配信もしているので、全国どこからでも参加可能だ。メインの対象を「家族」として、再発転移、放射線治療、緩和ケア、療養場所の選定などをテーマとして学ぶ。

 このセミナーの一番の特徴は、医師などの専門家の講演に続き、病気の実体験を持つ方が登壇する点だ。講演の後の意見交換会では、当事者ならではの深い思いを持つ言葉が交わされ、診察室では聞くことのできない体験者の語りに、講演した医師も真摯(しんし)に耳を傾けている。

 会のもう一つの特徴は、疾患を限定していないことだ。家族や暮らしを大切にし、人生を語ることに病名は関係ない。誰もが立場や病気に関係なく、参加することができるのだ。

 そこで、教養講座として、医療や暮らしを学ぶセミナーも開いている。医療的な手技や治療法を学ぶことは目的ではない。医療者が登壇する講座であっても、様々な経験を持つ参加者(患者・遺族など)とのやり取りで生じてくるものを道しるべとして、共に考え抜こうという空気感を大切にしている。その場で光を見つけようとする姿勢が未来の暮らしを変えると、宮本さんは信じている。

 さらに、毎月開催しているオンライン座談会も大切な活動の一つである。「延命治療」「親戚づき合い」というように毎回違うテーマを決め、それぞれの立場から考えを述べ、人の話に耳を傾ける。様々な背景を持つ人が集まる会だからこそ、気づかされることも多い。また、促された時に何かしらの発言をする積み重ねにより、参加者が徐々に自分の言葉で語れるようになることを宮本さんは期待している。

自分の人生観を大切にした医療を受けたい

 私自身も、延命ではなく、自分の人生観を大切にした医療を受けたいと考えている。そのために、主治医へ要望書を渡したり、薬剤師とその思いを共有したり、さらにはカフェのお客さんとチャレンジしたいことを語り合ったりしている。

 宮本さんは大学や医療者向けの研修会で講演することもあるそうだ。薬剤師、僧侶、がん患者としての背景を持つ立場からの話は、面白くも役立つものであると容易に想像できる。

 お勘定の小銭を取り出しながら、彼はこう付け加えた。

 「命は大切だという言葉は誰も否定しないでしょうし、私もそう思います。でも、『生きる』とは、命よりも大切なものに気づいていくことかもしれない。今、そんなふうに感じ始めています」

 カフェから出て行く後ろ姿を見ながら、宮本さんともっともっと深い話をしたいと私は思った。

 活動も魅力的であるが、あの柔らかく、すべてを包んでくれているかのような空気に何より魅力を感じる。彼が入店してきたときに、私が直感的に思った、ただならぬ雰囲気は現実のものだ。これからの彼の活動が力強く感じられた。(鈴木信行 患医ねっと代表)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

suzuki_nobuyuki_300-300i

鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事