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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

コロナワクチンの利益とリスク 正しく評価し、接種の判断を 日本感染症学会提言

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mRNAワクチン 痛みの副反応が高頻度に

 臨床試験での有害事象の発生頻度では、局所反応では特にmRNAワクチンでの痛みの発生が70~80%台程度と高かった。成人における不活化インフルエンザワクチンでの10~22%に比べてはるかに高かった。アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでも若年者群(18~55歳)で高かった。

 全身性の症状では、mRNAワクチンで倦怠(けんたい)感、頭痛、寒け、吐き気・嘔吐(おうと)、筋肉痛などの頻度が高かったが、対照群(非接種群)でもある程度みられていることに注意が必要としている。2回目の接種後に発熱が10~17%に発生し、対照群にはほとんどみられなかったことから、ワクチンによる副反応の可能性が高いと述べた。アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでの発熱は若年者群の1回目で24.5%だった以外はみられなかった。

 重篤な有害事象は0.6~1%にあったが、対照群との差はみられなかった。臨床試験の対象は白色人種がほとんどでアジア系の割合が少ないことから、国内での臨床試験の安全性の確認が欠かせないとしている。また、超高齢者や基礎疾患を持つ人への試験も十分ではなく、基礎疾患ごとの安全性を検討する必要があるとした。

長期的な有害事象への注意が必要

 新しく導入されるワクチンは、数百万人規模に接種された後に新たな副反応が判明することも考えられることから、数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要。接種を受けた人が発症した場合に、症状がより重くなるワクチン関連疾患増悪(VAED)や、ワクチンによってできた抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(ADE)にも、将来的に注意深い観察が必要だとしている。

 提言は、今後の状況の変化に伴い、随時更新される予定としている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

・日本感染症学会ワクチン委員会「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=43

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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ワクチンの意味と他の医療システムとの並列

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

ワクチンの現行新型コロナウイルスへの効果自体もさることながら、変異株への有効性や他の病原微生物及び他疾患とのバランスも考えていくことは重要です。...

ワクチンの現行新型コロナウイルスへの効果自体もさることながら、変異株への有効性や他の病原微生物及び他疾患とのバランスも考えていくことは重要です。
結論が未来にあるという難しさがあります。
がんの免疫チェックポイント阻害薬の場合は、既存の治療に抵抗性の強い可視化された病変に対して行うわけですから後発してくる種々の副作用にも納得しやすい側面もありますが、ワクチンなどの予防治療は集団として感染症が可視化された状態であっても、個々人には未確定の病変に対して医療を行う難しさがあります。
副作用無視の安易なワクチン肯定がかえって中長期的なワクチン集団医療の妨げになることも分かります。
ところで、個人あてに、「新型コロナは生物兵器ですか?」という質問が来ました。
結論から言えば、証拠がない以上絶対に違うとは言えないし、使われうるという万が一の事態の想定も踏まえ、不毛な議論より類似のモノとして対処するのがベターだと思います。
国際情勢の変化やウイルスの変異と広がりによっては類似の状況になりうるということは頭に置いておいた方がいいということです。
そして、ワクチンや治療薬、そして、セットで議論されるべき新型コロナ以外の医療体制との複合的体制も議論になってくると思います。
炎症反応や血栓症が現行の新型コロナの一つの特徴ですが、各臓器への影響、慢性的な変化など、感染の有無やワクチン接種の有無と並列で存在します。
一部開業医の経営危機も言われますが、病床稼働率とか地域医療の納得とかだけでなく、中長期的な人材確保や遠隔医療支援などの医療の形も模索していくフェーズに入っていると思います。

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