田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
コロナワクチンの利益とリスク 正しく評価し、接種の判断を 日本感染症学会提言
ゼロリスクはあり得ない

新型コロナウイルスのワクチンの接種が、近く日本でも開始される見通しだ。高い有効性が伝えられる一方、従来にない手法を用いて極めて短期間に開発されたこともあり、接種に伴うリスクの可能性も指摘されている。
ワクチンに関する有効性と安全性に関する科学的な情報を解説し、接種するかどうかの判断をする参考にしてもらおうと、日本感染症学会ワクチン委員会が「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版 2020年12月28日)」をウェブサイトに公開している。感染拡大防止にはワクチンの普及が欠かせないとしつつ、ワクチンも他の薬剤と同様にゼロリスクはあり得ないとして、「私たち一人一人がその利益とリスクを正しく評価し、接種するかどうかを自分で判断することが重要」としている。
ワクチンの「有効率90%」とは 免疫持続性の評価はまだ
新型コロナウイルスのワクチンは世界で数多くの開発が進められており、mRNA(メッセンジャーRNA)やDNAなどの核酸を用いたものや、別のウイルスを運び屋にするウイルスベクターワクチンのほか、組み換えたんぱく質や従来型の不活化ワクチンなど様々な種類がある。
このうち、日本で当面供給が見込まれているファイザー社、モデルナ社のワクチンはmRNAワクチン、アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンだ。mRNAが人に実用化されるのは初めてになる。
有効性について、ファイザー社とモデルナ社のワクチンは、臨床試験で90%以上の有効率がみられた。インフルエンザワクチンの65歳未満の成人での有効率が52.9%(2015/16シーズン)であることを考えると、「予想以上の結果」としている。アストラゼネカ社のワクチンは、1回目低用量、2回目標準用量では90%、1、2回目とも標準用量の試験では62%だった。
「有効率90%」の意味について、提言は次のように分かりやすく解説した。「90%の人には有効で、10%の人には効かない」とか「接種した人の90%はかからないが、10%の人はかかる」という意味ではなく、接種した集団と接種しなかった集団の発症率を比較して「接種しなかった集団の発症率よりも、接種した集団の発症率の方が90%少なかった」ということだ。接種しなかった場合に比べて、発症のリスクが10分の1になるということを意味する。
提言はまた、いずれの試験でも重症者数が限られているため、重症化予防効果の評価は今後の課題であること、75歳以上への効果は対象者が少なく評価できないこと、試験期間が100~150日と短いため、免疫がどれくらい持続できるかの評価がまだできないことなどに、注意を促した。
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ワクチンの現行新型コロナウイルスへの効果自体もさることながら、変異株への有効性や他の病原微生物及び他疾患とのバランスも考えていくことは重要です。
結論が未来にあるという難しさがあります。
がんの免疫チェックポイント阻害薬の場合は、既存の治療に抵抗性の強い可視化された病変に対して行うわけですから後発してくる種々の副作用にも納得しやすい側面もありますが、ワクチンなどの予防治療は集団として感染症が可視化された状態であっても、個々人には未確定の病変に対して医療を行う難しさがあります。
副作用無視の安易なワクチン肯定がかえって中長期的なワクチン集団医療の妨げになることも分かります。
ところで、個人あてに、「新型コロナは生物兵器ですか?」という質問が来ました。
結論から言えば、証拠がない以上絶対に違うとは言えないし、使われうるという万が一の事態の想定も踏まえ、不毛な議論より類似のモノとして対処するのがベターだと思います。
国際情勢の変化やウイルスの変異と広がりによっては類似の状況になりうるということは頭に置いておいた方がいいということです。
そして、ワクチンや治療薬、そして、セットで議論されるべき新型コロナ以外の医療体制との複合的体制も議論になってくると思います。
炎症反応や血栓症が現行の新型コロナの一つの特徴ですが、各臓器への影響、慢性的な変化など、感染の有無やワクチン接種の有無と並列で存在します。
一部開業医の経営危機も言われますが、病床稼働率とか地域医療の納得とかだけでなく、中長期的な人材確保や遠隔医療支援などの医療の形も模索していくフェーズに入っていると思います。
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