一病息災
闘病記
[演出家・作家 宮本亞門さん]前立腺がん(1)TV番組で検査 告知もカメラの前で…これは現実なのか?
大至急、病院に行くように――。所属事務所から、ただならぬ気配の緊急連絡が入った。
翌朝、駆けつけた都内の病院で、いきなり前立腺に影があることを指摘された。細胞組織を調べると、懸念通り、がんが見つかった。
その後の画像検査などでは他臓器への転移は見つからず、早期の前立腺がんと診断された。
2019年2月にテレビのバラエティー番組で、人間ドックを受けた結果だった。再検査の間も、医師からの説明を受けている時も、近くでテレビカメラが回っていた。
「これが現実なのか、フィクションなのかわからなくなりました」
自覚症状はない。頭が混乱しながらも、思い当たることはあった。2年前から、人間ドックの検査結果表には、前立腺特異抗原(PSA)の異常値、それに「要再検査」という赤い文字が記されていた。がんの可能性が示されていたのに、「大丈夫だろう」と自己判断し、せっかくの警告を無視してきた。
国立がん研究センターのデータによると、転移がない前立腺がんの10年生存率はほぼ100%と、予後は良好だ。とはいえ、主治医は「転移がないだけで、前立腺の内部から、がん細胞が突き破って出そうな状態」と説明した。
楽観はできなかった。
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演出家・作家 宮本亞門 さん(63)
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