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森本昌宏「痛みの医学事典」

 頭痛、腰痛、膝の痛み……日々悩まされている症状はありませんか? 放っておけば、自分がつらいだけでなく、周囲の人まで憂鬱にしてしまいます。それだけでなく、痛みの根っこには、深刻な病が潜んでいることも。正しい知識で症状と向き合えるよう、痛み治療の専門家、森本昌宏さんがアドバイスします。

医療・健康・介護のコラム

その「ひどい肩こり」は椎間板ヘルニアかも…頸椎でも起き、せきやくしゃみで悪化する

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40~50歳代の男性に多い

 約20年前には、他の部位での頸椎椎間板ヘルニア(左側への)に苦しんだこともある。側方に出る“キーガン型”と呼ばれるもので、右上腕の筋肉が見事に落ちた。以来、電車やバスでは、必ず体の左側を進行方向に向けるようにして、首に負担がかからないように注意していた。髄核が後ろ向きに脱出する頸椎椎間板ヘルニアでは、首を前屈(うなずく姿勢)させるやや高めの枕が推奨されるが、これと同様に、側方へのヘルニアでは、首を反対側に傾ける方が楽なのである。ところが今度は右側へのヘルニアである。どのような体勢で電車に乗ればよいのか、悩んだ。

 頸椎椎間板ヘルニアは、40~50歳代の男性に多い(腰椎椎間板ヘルニアよりも10歳年齢層が高い)。椎間板ヘルニアというと、腰のものだと思われがちであるが、頸椎にも多く発生するのだ。後外側へのヘルニアでは、神経根症としての症状、つまり障害を受けている神経が支配する部位に痛みやシビレをきたし、せきやくしゃみで悪化する。鼻をかむことすらつらいのである。一方、中央へ飛び出すヘルニアでは、脊髄の圧迫によって脊髄症としての症状を引き起こすことがある。腕のしびれと 巧緻(こうち) 運動(手先を使う細かい作業)障害、さらには脚のしびれ、歩行障害(脊髄性間欠性 跛行(はこう) )、場合によっては直腸 膀胱(ぼうこう) 障害(排便と排尿の障害)などを生じる。

高度のまひを伴う場合は手術も

 診断にあたっては、私も受けた頸椎MRIが有用である。肩こりがひどい患者さんで首のMRIを撮ると、高い確率で頸椎椎間板ヘルニアがみつかるのだ。その他、椎間板造影で痛みが再現すれば、その椎間板が原因となっていることが確定できる。また、この際に、局所麻酔薬と副腎皮質ステロイド薬の混和液を注入しておくと、神経根周囲の炎症を軽くする効果がある。

 神経根症に対してはまず保存的治療を行う。全身安静と牽引療法、ポリネックの使用、ガバペンチノイド(抗てんかん薬の仲間)の処方などである。ペインクリニックでは、星状神経節ブロック、腕神経 (そう) ブロック、頸部硬膜外ブロック、神経根ブロックなどによって対処している。これらの治療の効果がなく、高度のまひを伴うものや、脊髄症の一部では、手術の適応となることもあるが、術後に多くみられる「フェイルドネックサージャリー症候群(頸椎の手術後に痛みが残存したり、再発したりする状態)」の発生は避けなければならない。(森本昌宏 麻酔科医)

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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