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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

「心因性」とされた舌痛症 上咽頭の治療で症状が消えたのはなぜ?

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慢性上咽頭炎の治療をしたら…

 Yさんの上咽頭部を内視鏡で観察すると、やはり慢性上咽頭炎がありました。一般的には 後鼻漏(こうびろう) やのどの違和感、絞めつけられる感じといった症状が目立つ慢性上咽頭炎ですが、ひどい炎症があるにもかかわらず、無症状の場合もあります。

 Yさんは、問診で後鼻漏があることが分かりました。掌蹠膿疱症は代表的な病巣疾患ですから、慢性上咽頭炎の治療で改善する可能性があります。果たして、Yさんの掌蹠膿疱症も上咽頭擦過治療(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy  2020年5月11日のコラム参照 )にて改善しました。しかも驚くことに、舌痛もなくなったのです。これはどういうことでしょうか。

「心因性」とされた舌痛症 上咽頭の治療で症状が消えたのはなぜ?

脳の誤作動で上咽頭の炎症が舌の不快感に

 上咽頭部には、第Ⅹ脳神経である迷走神経が分布しています。舌には様々な神経が分布していますが、触覚、味覚は 三叉(さんさ) 神経(第Ⅴ)、顔面神経(第Ⅶ)、舌咽神経(第Ⅸ)が担当しています。食事を味わうときにはたくさんの脳神経が働いているのですね。もちろん、フーフーと熱いものを冷ましたり、しゃべったり、口笛を吹いたりする時にも多くの脳神経が活性化します。舌を動かすことは、脳を動かすことといっても過言ではなさそうです。あいうべ体操で、舌を思い切り動かしている時には、脳神経がたくさん活性化しているイメージで実践してみるのも良いですね。

 さて、これらの舌の知覚を担っている脳神経ですが、脳の延髄にある 孤束核(こそくかく) という神経細胞の密集地帯に一度、その情報が集められます。その際に、どの部分で炎症が起こっているのかが混乱して誤情報が伝わってしまい、上咽頭の炎症が舌の痛みや不快感として伝えられると考えられます。Yさんの舌痛症も、上咽頭の炎症によって生じたフェイクニュースが脳に伝わったのです。

 舌痛症の原因に「慢性上咽頭炎」が列挙されていることはありませんが、日常臨床ではよく遭遇します。原因不明の舌痛症と言われたときに、すぐ「精神的なもの」とせずに、後鼻漏やのどの違和感があれば慢性上咽頭炎を疑ってみると良いでしょう。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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