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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

リンチ症候群患者家族会「ひまわりの会」

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 「リンチ症候群」は、若い年代から、がんが発生しやすくなる遺伝性疾患です。がんは、大腸・子宮内膜・胃など様々な臓器に発生しますが、大腸が最も多いです。大腸がん全体の1~4%程度がリンチ症候群と言われています。リンチ症候群は一般の人の370人に1人との報告もあり、最も頻度が高い遺伝性腫瘍の一つです。「ひまわりの会」は、患者とその家族が不安や悩みを打ち明け、励まし合うことなどを目的に活動しています。

リンチ症候群患者家族会「ひまわりの会」

国立病院機構岩国医療センターで開催された「第10回ひまわりの会総会」(2019年4月)

同じ境遇だからわかり合える

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患者やその家族が集まり、近況を伝え合ったバーベキュー(2019年10月、山口県岩国市で)

 「リンチ症候群ってなに?」「がんになりやすい遺伝子とは?」「子どもへ遺伝するの?」……。

 がんと告知されるだけでも孤独感や不安感が強くなるものですが、リンチ症候群は、詳しい知識を持っている人が少ない病気のため、様々な疑問が湧くと思います。ようやく治療を終えても、いつ再発や転移をするのか、心配でなりません。発症前に遺伝子検査で診断される人もいますが、いつ発病するか分からず、不安を抱えながらの生活は、とてもつらいものです。

 そのような不安を理解し合い、一人ひとりの心の悩みを共有することで、今後の望みにつなげていけるように支え合うことを目的に活動しています。

 年2回、懇親会を開催してきました。お茶を飲みながら近況を聞いたり、平日参加が難しい方が参加できるように土曜日にバーベキューを開催したりしています。

 通常の診療では時間がないため、医師とゆっくり話をすることができません。懇親会には医師にもご参加いただいていますので、参加者は、医師に日頃聞けないことをゆっくりと相談することができます。また、会員の皆様それぞれが不安や悩みを言い合える機会にもなっています。

リンチ症候群を学ぶ講義を開催

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日本遺伝カウンセリング学会・日本遺伝診療学会の合同学術集会にブースを開設し、リンチ症候群について広報活動を行った(2019年8月、札幌市で)

 リンチ症候群は一般的ながんの方と見分けることが難しく、大部分は、患者さん本人も医療関係者もリンチ症候群であることに気づいていません。この疾患を理解するため、最近の治療や検査、予防について年1回、国立病院機構岩国医療センターの医師を講師として招き、勉強会を開催しています。

 ひまわりの会の会員は、リンチ症候群の患者当事者であり、同時に、当事者を支えた家族の、どちらの立場も経験されている方もいます。大切な家族を若くしてがんで亡くされた方も少なくありません。一般の方よりは、がんに対する不安が強くなります。

 何度もがんを繰り返し、「今度9回目の手術を受けます」と言う方もいらっしゃいます。一度では終わらない、発病への不安を持って生活を送っています。

 メンタルケアを含めた診療を、全国どこでも、安心して受けられる医療体制が整うことが私たちの願いです。また、リンチ症候群を多くの人に知ってもらいたいと、年1回開催される日本遺伝性腫瘍学会などで、病気や会の活動などを紹介する広報活動も行っています。

社会的差別を受けないように国に陳情も

 リンチ症候群は、遺伝性腫瘍の一つなので社会的差別を受けることがあります。「遺伝性のがんとの告知がなかった」との理由で生命保険が下りなかった、老人ホームの入所を断られた、がんの治療後、会社に復帰したら配置換えさせられた――。「治療を終えて元気になったと思ったら、何度も再発し、入院されるのでは困ります」と、ご主人の会社の方から言われたという奥様もいらっしゃいます。

 ほかの遺伝性腫瘍の家族会の方々と協力しながら、社会的差別を受けることがないよう、国に法整備を求める陳情活動にも参加しています。

 子や孫ら次世代への遺伝のことも考えて、微力ですが、できる限りの活動を行っていきたいと思います。

リンチ症候群患者家族会「ひまわりの会」

 患者仲間から出た「同じ境遇の人と不安や悩みを共有できれば」との声がきっかけとなり、患者家族会「ひまわりの会」は2014年11月に発足した。会員はリンチ症候群の患者とその家族。会の代表者と事務局担当の3人が中心となり、国立病院機構岩国医療センターの担当医・看護師などの支援もいただきながら活動してきた。年に数回、リンチ症候群についての勉強会や懇親会を開催している。現在の会員数は38人。

 問い合わせは、国立病院機構岩国医療センター内 ひまわりの会事務局代表(柴田良子)、電話0827・35・5645、ファクス0827・35・5897

ホームページ  https://iwakuni.hosp.go.jp/himawarinokai.html

 このコーナーでは、公益法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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