リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
人に知られず死んでいく「孤独死」、実は4割が現役世代、コロナ禍で増加の心配も
孤独死は個人だけではなく、社会的な問題
孤独死が問題なのは、本人の問題であり、それ以上に社会的な問題でもあるからです。同協会によると、亡くなってから発見までの平均日数は17日。遺体は傷んでいるので、賃貸住宅の物件価値が下がります。それに加えて遺品を処理するには相続権者全員の同意が必要で、場合によっては大変な手間と時間がかかります。このため単身高齢者への賃貸住宅の貸ししぶりが起こっています。
そこで、国土交通省は、遺品処理の手続きを簡便にするための契約のあり方を検討して、今年度内に整理する方針です。孤独死は異常事態ではなく、あたり前に起こりうることとして、制度に組み込もうというわけです。
配偶者を亡くした高齢者はかかりつけ医を
職業柄いろいろな例を見てきました。配偶者を亡くした後、なんとか新しい配偶者を見つけようと、結婚相談所に行き、お金を巻き上げられた高齢男性。訪問診療を手伝っていた時に時々見聞きしたのは、介護保険を使って来てもらったヘルパーが気に入って、多額の報酬やプレゼントをあげてしまう話です。
あるケースでは、娘さんから「先生、父はあのヘルパーさんにもう500万円は渡しています。なんとか言ってくだい」と頼まれたこともありました。別の家では、亡くなった後、遺品整理をしたら、高額な絵画がなくなっていたなんていう話もありました。
孤独死は高齢者だけの問題ではありませんが、私は、配偶者をなくして1人になった高齢の患者さんには、必ず、かかりつけ医を持つようにと言っています。介護が必要な状態になっても、医師や介護のチームにかかわってもらうことで、いざという時につながりを持って、フォローしてもらえるからです。
一人暮らしは気楽な反面、年を重ねていけば、体の機能は衰え、突然亡くなっても不思議はありません。それに備えるには、孤立せず、人とつながりを持つための工夫が必要だということでしょう。(富家孝 医師)
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