メディカルトリビューン
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精神病性障害で最も高い自殺リスク 精神疾患別の検討で明らかに
精神疾患患者における自殺リスクが高いことは知られているが、中でもうつ病、双極性障害、精神病性障害は特に高リスクである。韓国・Seoul National University Hospital(SNUH)のYoojin Song氏らはこれら3つの精神疾患における自殺リスクを検討し、結果をJ Korean Med Sci( 2020年12月7日オンライン版 )に報告した。
4万例超、14年分の電子カルテを解析
自殺者数が多いことで知られる韓国においても、精神疾患と自殺との関連はかねてから指摘されている。特に高リスクとされるうつ病、双極性障害、精神病性障害について、Song氏らはSNUHの電子カルテ情報を基に検討を行った。
対象は、2003年3月1日~17年12月31日にSNUHの精神科外来、入院、救急科のいずれかを少なくとも3回受診した患者4万1,289例。患者を、自殺死亡群(597例)と生存/非自殺死亡群(4万692例)に分けた。患者の診断については、初診以降に付いた主な疾患とした。
一般人口と比較した精神疾患患者の自殺による標準化死亡比(SMR)を評価することを目的に、年齢、性、併存疾患(人格障害や疼痛性障害など)で調整した各精神疾患における自殺のSMRおよびハザード比(HR)を求めた。
精神病性障害では自殺リスク4倍超
自殺死亡群と生存/非自殺死亡群の背景を見ると、20歳代が最多を占め(自殺死亡群25.6%、生存/非自殺死亡群17.9%)、自殺死亡は男性で多かった(順に53.8%、44.1%)。精神疾患別に見ると、自殺死亡群では精神病性障害が最多を占めていたのに対し、生存/非自殺死亡群ではうつ病が最も多かった(同31.3%、23.6%)。併存疾患は、自殺死亡群では人格障害が最多であった一方、生存/非自殺死亡群では疼痛性障害が多かった(同4.2%、3.7%)。
一般人口と比べた自殺死亡群のSMRは5.13(95%CI 4.73~5.56)であった。精神疾患別にSMRを検討したところ、精神病性障害が13.03(同11.23~15.03)と最も高く、双極性障害が10.26(同7.97~13.00)、物質関連障害が6.78(4.14~10.47)、うつ病が5.69(4.78~6.73)と続いた。
さらに自殺死亡群における精神疾患別の自殺リスクのHRを求めたところ、精神病性障害が4.16(95%CI 2.86~6.05)、双極性障害が3.13(同2.07~4.75)、物質関連障害が3.12(同1.83~5.55)、うつ病が2.34(同1.60~3.42)と、対照群(精神症状を有するが、主たる診断名が非精神疾患であり、精神科での治療を受けていた群)に比べていずれも有意に高かった(P<0.001、 表 )。なお、それ以外の精神疾患ではいずれも自殺のHRは2倍未満と低く、有意差は認められなかった。
表.精神疾患別に見た自殺リスク
精神疾患患者の自殺リスクは個別に評価を
今回の結果を受け、Song氏らは「精神疾患患者の自殺リスクは一般人口の5.13倍に上ることが示唆された。中でも精神病性障害が最も高リスクで、双極性障害よりも高いことが分かった」と結論。自殺リスクは年齢や性、併存疾患によっても左右される可能性があることから、「精神疾患患者の自殺リスクは個別に評価することが重要である。韓国における精神疾患患者の自殺予防プログラムの策定にも役立つだろう」と付言した。(松浦庸夫)
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