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医療・健康・介護のコラム
発熱は感染と闘う体の反応、元気な様子なら早急な受診は不要……ただし、生後3か月未満は受診を
年末も押し迫ってきました。今年は新型コロナウイルス感染症に揺れた1年でした。状況は収まるどころか、患者数は増え続ける一方です。今年は帰省せず、家で過ごす方も多いかも知れませんね。私の住む長野県佐久地域でも、新型コロナウイルス感染症の影響で機能停止や診療を縮小せざるを得ない医療機関が出てきました。これまで当たり前に受けることができた医療が受けられなくなる切迫した状況ですが、これは全国どこも同じだと思います。
今、私達にできることは何か。それは、皆さんと一緒に受診の目安とホームケアを今一度振り返り、軽症であれば病院受診しなくても何とかしのげる状況を作ることだと思っています。不安もあるかも知れませんが、受診の目安を把握し、行うべきホームケアの知識を持っていれば大丈夫です。今回はお子さんの症状としてもっともありふれた発熱を取り上げたいと思います。
発熱はお子さんの受診理由としても一番多いです。ある推定では小児科医の診る子どもの症状の30%は発熱だという報告もあります(1)。ただ、発熱は珍しくない症状ではありますが、意外に誤解されている点も少なくありません。一つ一つみていきましょう。
「熱がある」というのは何度以上?
まず、熱がある、というのは何度以上を指すのでしょうか。感染症法という法律では、「発熱とは体温が37.5度以上、高熱とは体温が38.0度以上」と定義されています(2)。それでは、実際にご家族が子どもを病院に連れてくるのは何度の時でしょうか。
2017年に私が働いている病院の救急外来と小児科外来を受診した患者さん(616名)にアンケートを行い、「お子さんが何度以上の時に受診を考えますか?」と聞いてみました。最も多かったのは38度以上と答えた方で27%、38.5度以上と39度がそれぞれ21%でした。37.5度以上と答えた方は3%で、38度がひとつの受診の目安になっているようです。
ちなみに体温は夕方になると高くなり、午前中は治っていなくても、いったん下がっていることがあります。午後から再び上がることも多いですので、前日発熱がある場合には、朝、熱が低いからといって保育園などに登園させると、結局、午後から再び発熱で呼び出されることもあります。くれぐれも無理は禁物です。
38度になったらすぐに病院へ行かなければいけないか?
では、38度の発熱があった場合、すぐに病院に行かないといけないのでしょうか。
お子さんが発熱すると、皆さん心配になりますよね。どのようなことが心配なのでしょうか。ある研究では、もっとも多かったのは「脱水の心配」(74%)、次いで「脳に障害が出るのではないか」(70%)、そして「けいれんするのではないか」(66%)という結果でした(3)。脳に障害が出るかもしれないとか、けいれんするかもと思うと不安になるのは当然だと思います。これらの心配に対して回答していきたいと思います。
脱水対策にはこまめな水分摂取を
まず、一番多かった「脱水」の心配についてです。これは正しい心配で、確かに発熱すると体から水分が失われます。脱水になるリスクもあり、こまめな水分摂取は必要です。ただ、発熱時はぐったりしていることが多く、あまり水分を取ってくれないのが悩みどころです。ご家族が心配になるのもごもっともです。水分摂取量の目安として、米国小児科学会は、水分が取れない場合、最初の1時間に30㎖、飲めたら次に60㎖というふうに徐々に増やしていくことを勧めています(4)。一度にたくさん取り過ぎると吐くこともあるので、こまめに繰り返し与えることがコツです。水分としては、赤ちゃんは普段の母乳やミルクでよく、食事を取っている子は経口補水液や薄めたリンゴジュースなどでもよいでしょう。なかなか水分が取れない場合には、氷のかけらを口に含ませる方法もあります。
発熱だけが原因で脳にダメージを与えることはない
次に「脳の障害」についてはどうでしょうか。結論から言うと、発熱だけが原因で脳にダメージを与えることはありません。そもそも発熱は体を守るための免疫のしくみです。子どもの発熱の原因で多いのは感染症なのですが、発熱している体内ではウイルスなどの病原体は増えにくいのです。また発熱によって、病原体と闘う白血球の数も増えやすくなります。つまり、発熱は体が病原体と闘うための反応なので、それ自体を心配する必要はないというわけです(5)。
ただし、発熱すると体の代謝が活発になり、より多くの酸素が必要となります。普通のお子さんは特に問題になりませんが、肺や心臓に生まれつきの病気を抱えているお子さんの場合は例外で、発熱だけでもぐったりしやすい傾向があるので注意が必要です。
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