ココロブルーに効く話 小山文彦
医療・健康・介護のコラム
【Track9】対人トラブルによる不安障害の女性を支えた職場の仲間たち
「職場でもこんなことがあるのか」
今回のエピソードは、決して珍しいものではありません。むしろ、どんな職場でも起きていること、もしくは起こりうることです。ユウコさんのように、対人関係で生真面目であるからこそ、他人からすると 些細 なことで気に病む人はたくさんいます。職場の人間関係上の問題は、思わぬ誤解や 齟齬 が発端となって、様々な形となって表れるもので、それを予測したり、回避したりすることは簡単ではありません。
ユウコさんの例が、短期間のハッピーエンドになったのは、部署やグループ内でのスムーズな意思疎通と連携があったからであり、ある意味、「組織の力」であり、「組織に属する人の力」と言い換えることもできます。「職場でも、こんなことがあるのか」と感じられたほどの仲間同士の支えと絆は、まさに心温まるものでした。
メンタルの問題は、当事者からの発信がないケースが少なくありません。だからこそ、誰かの変調に気づいた人がいれば、上手に健康管理に関わる専門職に相談し、その人たちがフットワークよく調整することで、深刻化を回避することも可能になります。
組織における産業医の役割も重要です。非常勤の立場でも一歩踏み込んで、日ごろから健康相談や職場巡視などで職員と「顔の見える信頼関係(ラポール)」が築かれていることが、予測不能なことが起きても、冷静、かつ迅速に事態を収拾するカギとなるはずです。
~ Plusココロブルーへのサプリ ?この一曲 ~
Morning Walk – Brian Culbertson
休日の朝、私は1時間程のウォーキングをします。ジムのマシンの上をひたすら歩くワークアウトとしてではなく、行き先をはっきり決めない「そぞろ歩き」といったところでしょうか。都内の自宅から、特に目的地を決めずに歩いていると、東京タワーの背景にある空の青さや、増上寺の 雅 な朱の美しさ、ひと休みしてマスクを外した時の芝の香りなど、普段は意識していないことに五感を傾けると、とてもリラックスしていることに気づきます。目前に現れるものに向ける心は、言わば「自分のありのまま」です。それは、自分自身を認め、慈しみ、癒やすことを表す心理学用語の「セルフコンパッション」そのものでしょう。
さて、スムースジャズ畑で活躍するピアニスト、ブライアン・カルバートソンが2019年冬に発表したアルバム「WINTER STORIES」は、彼自身がシカゴの冬景色からインスピレーションを受け、制作したそうです。この「Morning Walk」をはじめ、リリカルなピアノが引き立つ楽曲が並び、冬の朝の「そぞろ歩き」にもふさわしい暖かさも感じられます。
Morning Walk – Brian Culbertson
https://www.youtube.com/watch?v=Mh54tOnaPWE
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