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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track9】対人トラブルによる不安障害の女性を支えた職場の仲間たち

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 新型コロナウイルスの感染拡大に、社会全体が翻弄された2020年。在宅勤務や時差出勤の導入を始めた企業も少なくありませんでした。昨年までは、誰も予想していなかった形で、「働き方」の変化を実感することになったのです。その一方で、仕事に対する個人の向き合い方、職場の人間関係などは、働き方にかかわらず、ずっと変わらないテーマと言えそうです。そして、一緒に目的を持って前に進む仲間の大切さも、どんな社会状況になっても変わりません。

 自宅で過ごす時間が増えていても、誰かと顔を合わせ、声を聞き、ねぎらい合うことは、何よりも心の支えになる――。今回は、それを産業医として実感したエピソードです。

先輩の打診を断ったことで

【Track9】対人トラブルによる不安障害の女性を支えた職場の仲間たち

 食品製造会社に入社して3年目のユウコさん(21)は、納期が迫った自分の作業で手がいっぱいになっていました。そんなさなか、職場の先輩のアイさん(30)から、別の製造ライン(グループ)の応援に行けるかを打診されました。そちらもユウコさんの持ち場同様に人手が足りなかったのです。アイさんは、「ゆとりがあれば」程度の軽い気持ちで打診したに過ぎず、先輩として強要する意図はまったくありませんでした。

 自分の仕事に余裕がなかったユウコさんは、黙って首を横に振りました。きちんと、自分の状況を説明すればよかったのですが、その余裕もないほど、仕事に追われていたのです。

 「ああ、そう。わかった」と、アイさんは特に感情的にならずに答え、別の男性が応援に行ってくれました。

 忙しい職場では、珍しい話ではありません。

 ところがユウコさんは、「アイさんを怒らせてしまった」「別の先輩に迷惑をかけてしまった」と思い込んでしまいました。あまりにも強く思い悩んだため、3日間、仕事を休むことになり、忙しい時期に、むしろ職場に迷惑をかける結果になってしまいました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

 2021年5月には、新型コロナの時代に伝えたいメッセージを込めた 「リンゴの赤」 をリリースした。

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