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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

目や視覚の症状は眼球の診察だけで解決できるのか…眼科医の大半が知らないこと

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目や視覚の症状は眼球の診察だけで解決できるのか…眼科医の大半が知らないこと

 目や見え方に不調があれば、人々は真っ先に眼科医を受診することになります。 

 眼科医は、その不調に見合う目の異常があるかどうかを探すのが仕事です。眼科医の診察方法はどこでもだいたい同じで、見え方に不調があれば視力を測り、眼球に異常感を持っていれば、スリットランプと呼ばれる双眼顕微鏡や、眼底鏡を用いて異常の有無を確かめるでしょう。

 その時眼科医は、頭の中でどう考えているのでしょうか。

 見え方の不調に関しては、まず視力が出ているか、矯正眼鏡やコンタクトレンズは合っているか、老眼はないかということでしょう。

 次いで、眼球にドライアイ、アレルギー反応、白内障、緑内障といったありふれた病気はないかを気にするでしょう。さらに眼鏡などで矯正できない見え方の問題があれば、眼底検査をして網膜の黄斑部(網膜の中心部で見え方の感度のよい部分)や視神経乳頭(眼球に入った視覚情報を脳に送る視神経の始まり部分)に異常がないかなどを調べるでしょう。

 もし、何か病気が疑われれば、さらに検査を進めて診断を確定し、可能な治療を行うのです。

 ここで眼科医が陥りやすい誤りは、診断そのものよりも、当該患者が受診した理由と得られた診断が対応しているかという点です。

 左目の奥が痛くて困ると言っているのに、両眼の白内障やドラアイを見つけても解決にならないでしょう。文字の読み書きや自身の移動にも不都合なほどのまぶしさが持続しているのに、単に白内障のせいにしてしまうのも困りものです。確かに白内障では、光の入り方によって水晶体の濁りで光が乱反射してまぶしさを感じることはありますが、常時継続的にまぶしさを感じる病気ではないのですから。

 ここでは、目や視覚の症状を、眼球の診察で解決できるはずと思いこんでいる眼科医特有の性癖が災いします。

 この性癖のためでしょう、もし眼球に異常が見つからないと、多くの眼科医は急に興味をなくし、「大したことはない」「単なる疲れ」「気のせい」「大げさだ」「心が弱い」などとなりやすいのです。

 眼球で解決できない目や視覚の症状を考えるのが私の専門である神経眼科であり、心療眼科です。

 視覚系はヒトの体の中で最も精密でデリケートな感覚系で、眼球に入った情報はすべて脳へ行って処理されるので、感覚系を支配する脳の役割が非常に大きいことを、神経眼科の医師はよく知っています。

 この領域で、最近「中枢性 感作(かんさ) 」という考え方がとみにクローズアップされてきました。中枢性感作は、脳や脊髄などの中枢神経系において、感覚過敏を引き起こすメカニズムとして、体に生じる慢性 疼痛(とうつう) の説明として30年ほど前から提唱されてきたものです。線維筋痛症、 (がく) 関節症、片頭痛、過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、化学物質過敏症などさまざまな現代病を考える上で避けて通れない考え方になってきました。目の症状とも深い関係にあるのに眼科医の大半は残念ながらこれを知りません。

 次回は、「目の症状と中枢性感作」を考えてみることにします。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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