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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

病気の種類で差別があってはならない…確定申告における医療費控除

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病気の種類で差別があってはならない…確定申告における医療費控除

 一般的な近視や遠視の矯正のための眼鏡購入は、確定申告における医療費控除の対象にならない。

 つまり、通常の眼鏡は、税法上、治療費として扱わないという決まりがあります。庶民にとってやや厳しいルールだと私は思っていますが、「誰の目にも必ず遠視、近視、乱視があり、さらには加齢に伴う老視は万人が経験するもので、これを眼鏡やコンタクトレンズで矯正することは、洋服を着るようなものだから」と考えれば理解できなくもありません。

 先ごろ、高度のまぶしさ「 羞明(しゅうめい) 」を訴え、私の外来に通院している男性から、「遮光眼鏡を購入したが医療費控除の対象になるか」との質問が窓口にありました。私は当然適用されるはずだと思いましたが、男性には国税庁の文書に適用される病名がなかったことから、担当者は「適用されない」と答えたそうです。

 その答えのもとになった国税庁の通達(質疑応答事例)は、白内障手術後の視機能回復のための眼鏡購入費用は控除の対象になるか、との質問に対する文書で、「(ここに)掲げる病名と、医師による治療を必要とする症状を医師が記載すれば認める」としています。

 その病名は「弱視、斜視、白内障、緑内障、難治性疾患(調節異常、不等像性眼精疲労、変性近視、網膜色素変性症、視神経炎、網脈絡膜炎、角膜炎、角膜外傷、虹彩炎)」と、眼球の疾患だけが羅列されていて、「等」などといった例外を意識した言葉は入っていません。

 先の男性は、眼球には異常がない非眼球性羞明(脳の誤作動に基づく羞明と考えられる)に対する対処としての眼鏡なので、確かに「病名がない」ということになります。

 このことがあって間もなくの頃、よくメールのやりとりをしている友人の眼科医が、偶然にも類似例について、以下のように私に見解を尋ねてきました。

 「 眼瞼(がんけん)痙攣(けいれん) があって羞明のある患者さんから、『遮光眼鏡などを作って、もうすでに16万円も払ってしまったのですが、何か制度が使えないか』との相談がありました。ところが国税庁のホームページの文書を見ますと、羞明に関しては記載がありません」

 その医師が参照した文書とは、まさに私が見た上記と同じでした。

 私の返信を要約します。

 ――国税庁の文書には神経眼科領域の病気は念頭になく、いかにも例外を認めないような記載だ。本来は、税務署が各人の病気治療の事情に鑑み、医師の診断書などに基づいて判断すべきものだと思う。国税庁文書には、「照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答」とあって柔軟に対応される可能性もなきしもあらずだ。「羞明」に対する治療としてのメガネであるという診断書を出して対応をみてはどうか。

 公的文書にここまで具体的に病名が列記されると、それ以外はダメかもしれないとの予見が働きますし、例外は認められない印象を持ちやすいものです。

 書きすぎて図らずも欠点を露呈したといってもよいこの国税庁の文書ですが、病名によって(病名をつけにくい場合も含め)、差別が起きない扱いをぜひしてもらいたいものだと私は思います。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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