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佐藤純の「病は天気から」

医療・健康・介護のコラム

天気の予知ができる片頭痛患者、若い女性に多く…台風発生も感じる!?

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三叉神経は環境温の変化にも刺激され

 最近は、片頭痛の痛みは、 三叉(さんさ) 神経が何らかの刺激で興奮し、脳の血管が急激に拡張することによって起こるとみられています。私は、片頭痛が天気の影響を受けやすいのはなぜかを明らかにするため、ドイツのグループと研究を進めてきました。結果として、ラットを低気圧に暴露すると、内耳に分布する前庭神経の興奮とともに、脳の表面を覆っている硬膜に分布する三叉神経が興奮することが分かりました。つまり、天気痛の病態では、気圧の変化に対して内耳が過敏に反応して、めまい感が表れるのと同時に、三叉神経が興奮して片頭痛が発症するものと考えられます。

 三叉神経は顔面の皮膚にも分布しているので、環境温の変化によっても刺激されます。季節の変わり目にみられる寒暖差が、頭痛を悪化させるきっかけになることがあるのは、この作用によると思われます。寒い時期は比較的安定していても、気温が徐々に上がってくる春先になると、体調を崩す患者さんも少なくありません。また、今の季節だと、暖かい室内から急に寒い屋外に出たことで、頭痛が出ることもあるので注意が必要です。

天気の影響を減らすことは可能

 片頭痛の痛みを引き起こす誘因には、天気の変化のほかにも、まぶしい光や大きな音といった感覚への過度の刺激、睡眠不足、月経、運動、ストレスなどがあります。私が患者さんからよく聞くのは、「片頭痛が起こると、痛みのあまり寝込んだり吐いたりしてしまうから、そうならないようにさまざまな工夫をしている。けれども、天気だけはどうしようもない」ということです。あきらめて、鎮痛剤を多用している人が多いのです。

 天気痛は「痛みがあってもなんとかやっていける」という気持ちを持ちにくい病態だと言えます。しかし、多少時間はかかっても、天気の影響を減らすことは可能です。たとえば、気圧の変化を感じる内耳の敏感さを軽減すれば、天気に左右される症状も軽減します。天気の影響を減らす方法については、追ってお話ししたいと思います。(佐藤純 愛知医科大学学際的痛みセンター客員教授)

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佐藤 純(さとう・じゅん)

 愛知医科大学医学部学際的痛みセンター客員教授。中部大学教授。
 1958年、福岡県久留米市生まれ。東海大学医学部卒業後、名古屋大学大学院医学系研究科で疼痛とうつう生理学、環境生理学を学ぶ。同大学教授を経て、現職。2005年より、愛知医科大学病院痛みセンターにて、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設。

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