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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

コロナ対策の社会的距離が認知症高齢者の孤立深める 症状の悪化も

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日本老年精神医学会調査

コロナ対策の社会的距離が認知症高齢者の孤立深める 症状の悪化も

 新型コロナウイルス感染症の流行は、認知症や精神障害を持つ高齢者にとって社会的な孤立を強め、精神的健康状態の悪化をもたらしている。過剰な対策が高齢者の人権侵害につながっている懸念はないのか――。日本老年精神医学会は2020年12月20~22日にオンラインで開催した学術集会で、「新型コロナウイルス感染症の流行と老年精神医学」をテーマにした特別シンポジウムを開き、6~7月に会員に実施したアンケート調査について発表した。

 新型コロナの感染防止策としての社会的距離を保つ対策が、認知症や精神障害を持つ高齢者にとっては、状態の悪化に大きな影響を及ぼしていた。精神障害や認知症であることや、陽性者であることを理由に適切な医療サービスを受けることができなかったとの声や、感染防止策のために高齢者が過剰に行動制限されているのではないかと指摘する声もみられ、新型コロナに伴う認知症高齢者のケアをめぐる課題が改めて明らかになった。

不安障害、うつ病の発症、認知症の症状悪化も

 調査は、6月24日~7月31日に同学会会員2837人を対象に、ウェブサイトで行われ、224人の回答があった。回答者が所属する医療機関などでの新型コロナ患者・陽性者の入院や外来対応などは、10~20%の範囲で実施されていた。

 社会的距離を保つ対策の影響について、認知症がある高齢者の「社会的孤立が強まった」(64%)、「精神的健康状態またはBPSD(行動・心理症状)が悪化した」(48%)、「認知機能が低下した」(41%)、「ADL(日常生活動作)が低下した」(57%)という回答だった。認知症以外の精神障害がある高齢者では、「社会的孤立が強まった」(62%)、「精神健康状態が悪化した」(56%)だった。

 新型コロナ感染症の流行に関連して、発症または増加がみられた精神障害には、不安障害(54%)、うつ病(43%)、認知症(43%)、睡眠障害(33%),アルコール関連障害(17%)、せん妄(12%)などがあった。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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