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後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」

 大切な人を看取(みと)るとき、人は何を思い、看取りは、残された人々にどんなチカラを与えてくれるのか。後悔しない看取りについて、現役の病院看護師、後閑愛実さんが、ゆきさん作画の漫画と文章でつづります。

医療・健康・介護のコラム

「看取りのチカラ」第10話 緩和ケアの誤解

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痛みを取ることで生活の質を保つ

 医療用麻薬は適切に使えば、とても良い鎮痛薬です。以前、入院してきた、あるがん患者さんは、痛みで動けずに憔悴(しょうすい)しきっていました。医療用麻薬とステロイドを使用すると、痛みが緩和され、一人で動けるほどに回復しました。家族は「こんなに弱っているのだから最期は近い」と思って入院させたので、回復ぶりにびっくりしていました。

 もちろん、痛みの緩和はできましたが、病気そのものは進行しています。患者さんはその後、衰弱していきましたが、緩和ケアを適切に受けることによって、QOL(生活の質)を長く保つことができます。

 この患者さんは当初、「延命治療はしたくない。医療を受けずにいれば、早く死ねる」と話していました。どうやら医療用麻薬を延命治療だと思っているようでした。「私たちは、命を短くも、むやみに長くもしません。でも、この先すごく苦しまないよう対応することはできます」と説明すると、納得して痛みの治療を受けてもらえるようになりました。

 一方、家族は家族で、「モルヒネなんて飲むようになっては終わりだ」と、誤解をしていました。医療用麻薬を延命する薬だと思っている人もいれば、医療用麻薬は最後に使う薬であり、何の治療もできなくなったら受けるのが緩和ケアであるとか、いろいろ誤解されているように思います。

 緩和ケアは、がんとわかった早期から受けた方がいい医療なのです。

 「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見いだし的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。(「緩和ケアの定義」WHO 2002年)

 痛みなどの苦しみに対応することは、火事への対応に似ています。ボヤを起こさないように予防しておくことが大事ですし、もしボヤ(ちょっと痛い)が起きても、早い段階で対処すればすぐに消せて、甚大な被害を避けることができます。もちろん、苦しみをゼロにはできませんが、事前に対応しておけば、多くの人は眠る時間が次第に長くなっていって、そのまま眠るように亡くなっていきます。

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mitorinochikara

後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」
後閑愛実(ごかん・めぐみ)

原案・執筆 後閑 愛実(ごかん・めぐみ)
看護師
 群馬パース看護短期大学卒業後、2003年より看護師として病院に勤務。1000人以上の患者と関わる中で、様々な患者を看取(みと)る。看取ってきた患者から学んだことを生かし、看護師をしながら、13年から看取りの際のコミュニケーション方法について、研修や講演を通して伝えている。著書に「後悔しない死の迎え方」(ダイヤモンド社)。「月刊ナーシング」の連載「まんがでわかるはじめての看取りケア」の原作執筆担当(20年3月終了)。

ゆき味(ゆきみ)

作画 ゆき味(ゆきみ)
マルチクリエーター
 2017年、多摩美術大学卒業後、フリーの作家として、立体造形・映像作品・グラフィックデザイン・漫画制作を中心に活動。漫画やイラストの制作、MV制作、オリジナルキャラクターグッズ、広告やパッケージのデザインなど、幅広い制作を手がける。「まんがでわかるはじめての看取りケア」作画担当。NPO法人さかうえのプロモーション動画「加部安の時計~天明の祈り~」制作、編集担当。19年、YouTubeに「ゆき味アートチャンネル」を開設。

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